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「‥ッて‥」
「そりゃ体に穴開けてんだから痛ぇだろ」
近くの店でニードルとピアスを買って、適当なホテルに入った。
この時からこいつの企みに気が付いていればよかったのに。
ニードルの痛みは想像していたよりも痛くはなくて、爪で耳を抓られているような、そんな微量な痛み。
そいつは慣れた手つきでピアスに付け替え、目の前に横を向いて座っている俺の頭を軽く叩いた。
「終わったって声かけりゃいいだろ」
「いいじゃねえか、久しぶりの再会なんだし」
「別に昔も特別仲よかったわけじゃねえだろ」
「はは、確かに」
右耳に感じるじんじんとした痛みを感じていると、なんだか自分の考えがばからしくなってきた。
帰ろう。孝太郎にオムライスを作ってもらうんだ。明日はお互い仕事だから、次の休みにでも俺一人で不動産屋に話を聞きに行こう。
そう思いながら腰かけたベッドから立ち上がり、振り返ることなく、帰る、と言った。
そいつは何も言わなかった。
「‥え」
ホテルのドアに手をかけた瞬間、肩を掴まれ半ば強引に後ろを振り向かされる。力任せにされたせいか、反動で背中にドアが当たった、痛かった。
目の前にいるのは、電気のせいで少し暗く表情がわからない昔の悪友。
「何のためにこんなホテル入ったと思ってんの」
‥あ、俺、だめだ。
孝太郎の時とは違う、これから何をされるかなんて、こんな状況になれば誰でもわかることなのに。
好きでもない人に無理矢理されるっていうものがこんなに怖いものだということを、俺は21年経ってようやく知った。
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作者名:ヨッコラセ | 作成日時:2018年9月7日 23時