【刀剣乱舞】ソノ槍、折ラレケム【男主】

14粒：おじいちゃんず ページ16

嫌な目覚めだった。

手入れも終わったらしい。

外はもう暗く、月は傾いている。

「ありがとう、助かりました」

小さい人にそう告げて手入れ部屋を後にする。

もう少し居てもいい

と言っていたようだが、

綺麗にしてもらったうえに

そんな贅沢許されないだろう。

僕は月が出ていて本当に助かったな

と思いつつ縁側を歩いていく。

兄さんがいるとこ…槍部屋はどこだろう。

そういえばこちらの方は

あまりよく知らない。

どうしたものかと彷徨っていたら

縁側に座る影に遭遇した。

えっと…？

「お前は確か…Aと言ったか？俺は鶯丸。隣に居るのは三日月宗近だ。どうしたこんな時間に」
「三日月さんと、鶯さん…手入れが終わったので…部屋に戻ろうと」
「はっはっは。槍部屋は逆方向だぞ」

頭が真っ白になるというのは

こういうことなのだろうな。

おじいちゃん達ににこにこと笑われて、

なんだか、遣る瀬無くなってきたぞ…

「隣に座れ、どうせすぐ夜も明けよう」
「じゃ…失礼して」

三日月さんの左横に腰を下ろす。

池に映る月が美しかった。

「なんでこんな時間に？」
「じじいは目覚めが早くてなぁ」

はっはっはと優雅に笑うじいちゃんが

お茶をすすって、

奥の鶯さんが僕にもお茶を淹れてくれる。

なんだか、ここだけ

時がゆっくり流れているみたいだ。

「あそこも、これくらい美しかったらよかったのに」

闇は闇でも暖かさを感じたい。

死んだ先でくらい教えてくれれば良いのに。

「あそこ？」

鶯さんが聞き返す。

「僕がずっといたところです。何もない。何も聞こえない。闇でした。それもこれくらいキレイだったらと」

でも鶯さんも、

三日月さんも

あの闇のなかで明るく輝かそうだ。

チクリ、雨の降る音がした。

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