Seasons ー第1章ー

過去◆2017 健太くんの彼女 ページ36

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―――――2017年8月



毎朝確認していた胸元のキスマークは、もうとっくに消えてしまった。


それがやっぱり寂しくて、でもどうしようもなくて胸が苦しい。


1日だけの恋人なんて言わなきゃよかった。


もし、戻りたいって言ったら。健太くんは喜んでくれるのかな？


好きだよっていっぱい囁いてくれたあの夜に戻りたい。





「…おはよーございます」



いつもより小さな声で挨拶すると奥で盛り上がっているのか騒がしい。


こっちに背中を向けているけど、RIKUさんが健太くんの首を絞めてじゃれ合っている。その様子が気になって、そっと近付くとRIKUさんの口から出たのは衝撃的な言葉だった。




「健太、あの子と付き合い始めたってマジかよ！？お前あんな可愛い子が彼女とかズルイって〜」




いま、なんて言ったの？


呆然と立ち尽くす私を見兼ねて慌てて近寄ってきたのはいっちゃん。



「雪さん、ちょっと飲み物買いに行きませんか？」



いっちゃんの声を聞いて慌ててこっちに振り返った健太くん。ばっちり目が合ってしまった。



「ゆき、あのさ――」


「健太くん、おめでとうございます。幸せになってください」



大丈夫だよね？少し声が震えてたけど気付かれてないよね？



「ん、ありがとー。今度こそ大事にできるように頑張るよ」



切なげに微笑む健太くんに同じように笑顔を見せると強引に腕を引っ張られた。


何も言わずにリハーサル室を出るとずんずんと進むいっちゃん。



「っ、いっちゃん。どこまで行くの？」


「雪さんが思いっきり声上げて泣いても誰にも気付かれない場所」



いっちゃんは進んでいた足を止めると乱暴に私の頭を引き寄せた。



「これからは全部俺が聞きます。嫌なことも、健太さんに言いたくても言えない気持ちも、泣きたくなったときも。全部これからは俺が聞くんで、一人で抱え込まないで下さい」




いっちゃんの優しさに涙が止まらなかった。





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