episode 41 また彼が此処に帰って来れるように。 ページ43
海が荒れる早朝。
悲劇の筋書きはまだ途切れていなかった。
「エース、落ち着け！」
「今のあいつは手に負えない能力者だ、お前に何かあったらどうする！！」
外から騒ぎ声が聞こえ、慌てて部屋から出て甲板へ向かうと船を出すエースの姿が。
『...おいおい、』
(サッチ殺害を阻止しても、この筋書きは変わらないのか。)
「あいつは、ティーチは！二番隊隊員だ！殺害未遂でも、一度はサッチを殺そうとしたんだ！」
「いや、いいんだエース...。今回だけは。どうも嫌な予感がする。」
白ひげが静めようとするが、エースの憤りは収まらない。
彼の気持ちは痛いほど分かる。信頼出来る自分の部下が、この船上では最も禁忌とされる仲間殺しの罪に触れてしまった。怒りと共に、何も自分に話してくれなかった悔しさや寂しさもあるのだろう。
しかしその思いは決してエースだけのものでは無い。そりゃそうだ、皆悔しいんだ。だからこそ、それ以上に、彼一人に任せ危険な目に合わせる事だけはしたくない。
「俺は行く、隊長の俺がけじめをつけにいくんだ！...妹にも手をかけておいて、黙ってられるか！！」
『いや、ちょ待て待て待て。』
私も火種かい。
盲点だった、まさかそんな事まで彼は気にしていたのか。
「...！」
部屋から出てきた彼女を見つけると、エースはゆっくりと歩み寄り、膝立ちでしゃがみAと目線を合わせる。
「...あのさ、お前がティーチと戦ってフラフラなのを見た時凄く後悔した。凄く悔しかった。何であの場に居なかったんだ、何でサッチが狙われてることに気が付かなかったんだ、何でお前の傍に居なかったんだ、って。」
『エース』
「もう、悔いを残したく無ェんだ。」
ゆっくり首を横に振るエース。その表情はとても優しくて、酷く悲しい顔だった。
「それにティーチは、俺にとってはかけがえのない部下で家族で、友人だったんだ。ダチのけりはダチが付けなきゃ、だろ。」
今ここで、目の前で笑う彼に"行ってらっしゃい"と言ってしまえば、
2度と彼の"ただいま"を聞くことは叶わない。
しかしきっと彼の意志は曲がらない、曲げられない。そんな事は既知な訳で。
(………ならば、私は。)
『＿＿＿よし、ティーチに一発入れてこい！』
背中を押されたエースは力強く頷くと、素早くストライカーへ乗り込んだ。皆が必死に止める中、彼女は一人呟く。
『……"行ってらっしゃい"。』
(彼の帰り道を、探してみよう。)
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ミズキ(プロフ) - 休暇を求める者さん» それでも素晴らしいです！！いい感じの言葉を引用できる才能に感動しました！！！ (2022年3月9日 8時) (
レス) id: b335634606 (このIDを非表示/違反報告)
休暇を求める者(プロフ) - ミズキさん» はわ…畏れ多いです。夢主の良い返しが思いつかなさ過ぎて苦肉の策でツンデレ入れたなんて…言えぬ…。 (2022年3月8日 23時) (レス) id: 4630244e4e (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ(プロフ) - 「当たり前だバーロー」でもう、作者様の言葉選びのセンスを感じました！！面白いです！！ (2022年3月7日 5時) (レス) @page22 id: b335634606 (このIDを非表示/違反報告)
休暇を求める者(プロフ) - 美姫さん» す、凄い…そんな微細な変化にもお気付きになられるとは…笑 また遊びに来てくださり本当にありがとうございます。新作を機にこちらもぽつぽつと修正してまして、ぜひ間違い探し感覚でお楽しみいただけたら嬉しいです。 (2022年2月27日 13時) (レス) id: 4630244e4e (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - 久しぶりに初めから読んでみようと思ったら一番始めに『お手元に飲み物を』って書かれてて笑っちゃいましたwwしっかり飲み物を準備して読んだんですが、やっぱり最高に面白いです！これからも応援しています！無理せず頑張ってください！ (2022年2月27日 2時) (レス) @page1 id: ac5aee6225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：休暇を求める者
| 作成日時：2016年6月24日 18時
