episode262 人生の船出 ページ15
『へえ……。』
Aはそう呟きながら、予想斜め上のリアリティに内心首を傾げた。
この世界にも学校そのものはあるだろうが、外靴から上履きに履き替える文化は世界的に見ると珍しく、そこに制服も加わると、日本独特といっても過言ではない。
「あとは、お前が机に分厚い本とノート広げて何か熱心に書いてる所もみたってさ。で、親父的には本に載ってる世界地図が興味深かったって言ってたな。」
『ど、どう興味深いんだ……？』
「大陸が多いって言ってたよい。左右に逆三角形の大陸があって、真ん中は海で……南極にも大陸があったっけか。」
記憶を絞り出すマルコの隣で、Aはぽかんと口を開いた。十中八九、日本から見た世界地図である。そして今からちょうど1年前といえば、テストの時期真っ只中である。
そんな彼女の様子に気づかず、なおも一生懸命記憶を辿るマルコ。
次々と語られる夢の内容は、Aにとって心当たりしかない内容だった。空いて塞がらない口が乾燥し始めてきた頃、Aはとうとうマルコの話を遮った。
『マ、マルコ。』
「ん？」
『それ、正夢かもしれない。』
「……。は？」
マルコは一瞬思考が止まった様子。Aの言い方が明らかに冗談じみていなかったからだろう。
『それ、ちょうど一年前くらいの私の日常。覗き見てたのかってくらい当たってる…みたいなんですが……。』
「どッ、どういうことだよい」
『いや私もさっぱり』
お互い顔を見合わせたまま固まる。その時2人の間に風が吹き、それは親父のコートを大きく広げた。そこに意志があったかのように。見た者がつい意味を見出してしまいたくなるくらいに。
『……因果関係はよく分からないけど、まあ、異世界同士の関係だってまだまだ未知の領域だしな。そういう事もあり得るのかも、しれない。』
コートに向かって口の端を上げるA。マルコもつられてコートに目を向ける。
「……そうか。じゃあ親父は、分かってたんだな。お前が元気にやってるって。…………そうか、そうか…………。」
いや＿＿＿＿奇跡は起きた。
片手で眼鏡を上にズラし、そのまま目元を拭うマルコ。Aがまるでつつくようにマルコの脇腹に寄りかかると、彼は鼻を啜りながら彼女の肩を抱き、あやすように2回叩いた。
少し離れたところには、墓前の2人を見守る家族達の姿。
春空のような、清々しい青の日だった。
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nana☆(プロフ) - 完結おめでとうございます！ 本当に素晴らしい作品でした！私の物書きのきっかけでもありますし、前回のイラストの件など休暇さんにはとても感謝してもし尽くせないほどです、本当にありがとうございます！異世界放浪者シリーズに出会えて幸せです！お疲れ様でした！ (4月30日 16時) (
レス) @page27 id: 92d37a1e44 (このIDを非表示/違反報告)
雨が好きな人(プロフ) - 完結おめでとうございます。数年前からこっそり愛読していた者です。初めて読ませていただいたとき、こんな気軽に読んでしまって良いのかと、緑茶片手に衝撃が走ったのを覚えています。見事原作にも落ちました。一読者として愛しています。本当にお疲れ様でした。 (3月11日 23時) (レス) id: 6387ad7307 (このIDを非表示/違反報告)
二次元のまたたび(プロフ) - シリーズ完結、おめでとうございます…！私が学生だった頃からたくさんお世話になっていた作品でしたので、寂しい気持ちもありますが、何度も読み直して今後も楽しませて頂こうと思います。赤髪海賊団が気になるところではありますが(笑)本当にお疲れ様でした…！ (3月3日 6時) (レス) @page21 id: f3fb0c4a0c (このIDを非表示/違反報告)
蘆花(プロフ) - 完結おめでとうございます！！ルパンから入って最高すぎてこれ無料で見ていいのかなって不安になってたりしました！！！ほんとにお疲れ様でした！！！ (2月29日 21時) (レス) @page22 id: bf60b993eb (このIDを非表示/違反報告)
ユエ(プロフ) - 完結おめでとうございます！！異世界放浪者シリーズは一番大好きなお話で、特に気になるものないなって時に読み返したりを何度したことか…！異世界放浪者シリーズが終わってしまうのは悲しいですが、作者様の他の作品を読む日を楽しみにしております^^* (2月29日 21時) (レス) @page21 id: be34a73f87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：休暇を求める者
| 作成日時：2023年12月21日 0時
