異世界放浪者は浪漫を求めていない。[ルパン三世]

episode47 大泥棒の論破 ページ50

ルパンの問いかけに、必死に抵抗していたファイクの動きがピタッと止まる。


「願い？なん…」

「ミサンガ________愛する娘から貰った物だろ。ミサンガは願いが叶うまで、つまり切れるまで取り外しが出来ねぇお守りだ。…おいおい、その反応だと叶って無さそうだな？じゃあどうして大事なお守りが腕のどこにも見当たらないのか、説明してもらおうじゃねぇか。」

「ッ…！！いつの間に」

自分にだけ見えるように慌てて袖をバッとめくるファイク。

「そ…そうだ！願いが叶う前に切れてしまったから、自宅の机の引き出しに入れたんだ！つまりミサンガは私が偽物であるという証拠にはならない…」


うっすら脂汗を額に滲ませながらも、どうにか論破したと思ったファイクだったが。



「矛盾、その2。」



淡々としたルパンの声と、2本立てられた指にまたも絶句。


「は…？」

「一人称だ。俺がシャツカンマー博物館からドナウの女王を盗んだ2日後、お前と会った筈だぜ。その時のファイク・アイブリンガーの一人称は"僕"、だがドナウの泉から俺たちの後を付けていたファイク・アイブリンガーの一人称は"私"。」

『…あ。そういえば博物館に鉱石を見に行った時のファイクさんも、自分のこと"私"って呼んでたぞ…？』

「人は状況なり立場なりに応じて一人称を変えるが、今目の前にいるファイクはまだ一度も"僕"を使っていない。違和感を覚えるのも無理ねぇって話だろ？」

「…っは、何を言うかと思えば。確かに私は一人称を２つ使っているとも、だが言いがかりに過ぎないとは思わないかい？ルパン三世、貴方の提示する矛盾はどれも決定的ではない。博物館での事件から2日後に貴方と会った時は、たまたま私の気分で"僕"と言っていただけなのだから！」


「ああそうさ、裁判に持ってくとしても弱っちいもんだ。俺が持ってる矛盾の証拠は今ので最後だったんだけどなぁ…。




_____この瞬間、お前が口を滑らせちまうまではな。」




攻めの表情から一転、ファイクの顎から汗が滴り落ちる。そしてルパンの双眼がチェックメイト、と言わんばかりににやりと笑ったのをAは見逃さなかった。


「…博物館での事件から2日後、"俺"と会った。記憶に間違いは無いな？」

「あ、貴方が言ったんじゃないか！間違いないとも。」

「おいA、お前と博物館に行った日、俺がどんな格好をしていたか教えてやれよ。」




『え。…………ああっ！！？











________________変装…してた……。』

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