異世界放浪者は浪漫を求めていない。[ルパン三世]

episode38 emergency ページ41

「どこかの洞窟か？シュバルツヴァルトにこんな洞窟あるとは知らなかったな…」

『ここから北にある町の近く。"ヘッセ"っていう名前が彫られたベンチがあった。』

「ヘッセ……………ヘルマン・ヘッセか！」

突然声量が増えたルパンに、Aは首を傾げた。何かしら有名な人物の名前なのだろうが、聞いたことがない。

「ヘルマン・ヘッセは、ドイツ生まれの作家だ。ノーベル文学賞も取っている。ヘッセの名前がある町となると…カルフだな。彼が生まれた町だ。カルフから洞窟への行き方は分かるのか？」

『分かるよ、礼拝堂の裏の森を進めば』








prrrrr_________







突然、ルパンの携帯に着信。２人しかいない洞窟には、やけに響いた。


「どうした？…え？どこって、ドナウの泉の地下。___________________________は！？」


恐らく次元か五右衛門からであろう電話に応答したルパンは、突然目を丸くした。何だ何だ、とAが身構えていると、彼は２つ返事をして電話を切った。


「…A、今すぐ次元達と合流だ。」

『何があったんだ？』






「フレイヤが、アロガンズに誘拐された。」





電話を終えたのち、すぐさまルパンの車に乗り込んだ2人。ドナウの女王を回収して泉から出ると、地下への階段は自動的に閉ざされた。ドナウの女王が入場パスポートらしい。


「…。」

携帯を手にした時からいつもより少し険しいルパンの表情に、Aも非常に良くない予感がしていた。

『不二子さんを人質に取っている上で、更にフレイヤも人質ってどういう事だ？アイブリンガーさんに何か要求するのか、私達に更に脅しをかけているのか…。』

「もう一つ、可能性がある。」

ルパンはそう呟き、ハンドルを操作しながら淡々と話し始めた。

「不二子の身と引き換えに俺たちが強要されてるのは、秘宝を見つける事。お前の言う通りカルフにある洞窟が秘宝のある場所なら、俺はてっきり、その洞窟に入る為の鍵がドナウの女王だと思っていた。けどその鍵は、この地下で使うことになった。まあ、洞窟でも使うのかもしれないが…この地下はあくまでもヒントが詰まった案内所であって、秘宝がある訳ではない。」


夜中の冷ややかな空気に、彼の静かな声がよく響いた。










「根拠は全く無えが、可能性の話だ。



…もしもだ。本当に必要な存在が、









フレイヤだとしたら？」

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