episode32 求めていた言葉 ページ35
予想外の意見に、フレイヤは思わずAを見つめた。
『人間は元々不完全なんだよ。それをあーだこーだ責めたって、完全になる訳じゃない。自分に期待し過ぎだ。それにあんたは人に必要な自尊心も低い。』
「自尊心…。」
『…また偉そうな台詞になりそうで悪いけど、いいかフレイヤ。他人は技能や性格についてとやかく言う事は出来るが、
その人の存在自体を、否定出来る権利を持つ奴は誰一人としていない。』
グサっと、まるでそんな音が聞こえたかのように、フレイヤは形容しがたい感情に襲われた。
『あんたと話をしていて、やけにプライドが高いなと思った。けど、本当の意味でプライドがある人間は逆に謙虚なんだよ。相手の事も自分の事も尊重しているから。現に、あんたはそんな強気な性格じゃなかった。寧ろ引っ込み思案で、自分に自信がない。それを才能を盾にして必死に隠したがってる人間だ。だから、今すぐ自分を尊重しろって言ったって難しいのは当然だ。』
これも何かの腐れ縁だ、とAは笑った。
『フレイヤ、私が肯定してやる。
居場所が無いなんて言わせてやんねえ、自信も望みも無くしたら私に好きなだけ当たれば良い。
取り戻すまで存分に付き合ってやる。』
……うーん、我ながら臭い。とても臭い。
流石に引かれたかな、とフレイヤの方を見てギョっとした。
声を上げるでもなく、顔を歪めるでもなく、ただ静かにポロポロと涙を流していた。
『え、ちょ……え、何かまずい事言ったか?』
「……今まで、そんな事言ってくれた人、いない…。」
『や、いねえだろ。こんなストレートに…。』
「……たしかに。」
涙がまだ止まらない目が笑った瞬間、Aはホッとしたのと同時に痛感した。
思いは口に出さなきゃ伝わらない、人は鈍感なのだ、と。
彼女の頭によぎったのは、フレイヤの父親の姿だった。
フレイヤと和解した後、博物館へ向かった。次元が入手した情報を照らし合わせる為に。
そして、あの父親に色々と尋ねる為に。
「ああっ、君!!!」
『!?…どうしたんですか、アイブリンガーさん…。』
博物館に入るなり、フレイヤ父親であるファイク・アイブリンガーが顔を真っ青にして、彼女の前に現れた。
「娘が…っ娘が、行方不明なんだ!!!」
……ギクッ
episode33 進展→←episode31 彼女が出した結論
369人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「トリップ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
抹茶って美味しいよね(プロフ) - すみません。間違えました。実は、休暇を求める者さんの、作品2、3回くらい読み直してるんです。それ程面白くて…おこがましいと思うんですけど、フェアリーテイルのお話も作って欲しいです!! (2020年4月29日 22時) (レス) id: 8bfe17f4aa (このIDを非表示/違反報告)
抹茶って美味しいよね(プロフ) - 初めまして。今更ながら感想を書こうかと... (2020年4月29日 22時) (レス) id: 8bfe17f4aa (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 休暇を求める者さん» 大笑い♪♪冒頭しか、読んでいませんが、ルパン三世の登場人物そものですね。恐れいりました♪♪ (2019年12月17日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
なーなー@今日俺#最高かよ。(プロフ) - ふわぁあ!何日か来れていなかった間に絵が……追加されている…!!カッコいい!!大好きです!! (2019年4月25日 23時) (レス) id: 4de978dd23 (このIDを非表示/違反報告)
休暇を求める者(プロフ) - 灯籠さん» ほぁぁ良くぞ細かいところにお気づきで…:(;゙゚'ω゚'):時間のある時に一通り確認しようと思います、ありがとうございます。 (2019年4月22日 17時) (レス) id: ab4c20710e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:休暇を求める者 | 作成日時:2018年12月28日 17時