episode31 彼女が出した結論 ページ34
自宅に戻ると、Aはベッドに倒れこんだ。
…帰り道、フレイヤの言葉がずっと頭の中をぐるぐると回っていた。
"どこに逃げればいい"
なんて情けない奴だ、と思った。自ら死を望むという発想が彼女には全く理解できなかった。彼女は大切な事を何も分かっていないと思った。
しかし、本当に分かっていないのは
(………私の方だったのかも。)
帰りがけに博物館に寄った時、ファイクの姿があった。娘がいると言っていた部屋に行く素ぶりは無く、仕事の一環なのか、客と話していた。
ずっと。
(……あーあ。今日は凄く嫌な日だ……。)
理由もよく分からず流れ出る涙を枕で隠しながら、眠りについた。
翌日午前。Aの足に躊躇いは無かった。
真っ直ぐにアジトへ向かい、はっと我に返った時、既に目の前にはドアノブがあった。
…無理だったら、その時はその時だ。
軽く息を吐くと、右手はしっかりと鍵を差し込み、ドアノブを引いた。
「_________!!……何、帰っ…て。」
なんの予告もなしに部屋の中へ入ってきた人間に、フレイヤは嫌悪感を丸出しにしつつ、やはり気まずさは隠せない様子。
『断る。言いたい事をお前が聞いたら帰る。』
「はあ?何でそう上から目線_________」
『……………悪かった!!!!!』
ばっと、目の前で勢いよく下げられた頭にフレイヤは戸惑った。というよりも、唐突な事すぎて、驚きのあまり思考が止まった。
『昨日の私はあまりにも他人事だった、偉っそうな台詞つらつら並べてるくせに、あんたの事ちっとも考えちゃいなかった。ただただ上っ面な正義感だった。ごめんなさい。』
「え…」
『前言撤回だ。………別に逃げたっていい。死ぬことに縋ったっていい。でも、自己責任だ。死にたいなら私はもう止めない、勝手に一人で死ねばいい。』
「…っ。」
フレイヤの顔が泣きそうに歪んだ。そう、彼女は死にたいと言っている。しかし彼女が本当に欲しいのは、そのことへの肯定でなはいとAにはもう分かっていた。
『逃げたっていい。ただし、かならず"Uターン地点"を決めろ。どれだけ嫌な事辛い事があって逃げても、戻ってこなきゃいけない。帰り道を見失って、取り返しがつかなくなる前に。』
「何…言ってんのか分からない……」
『"生きてる価値が無い"?思うのも無理ないだろうよ。…それは単にな、
あんたの理想が高すぎるんだ。』
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抹茶って美味しいよね(プロフ) - すみません。間違えました。実は、休暇を求める者さんの、作品2、3回くらい読み直してるんです。それ程面白くて…おこがましいと思うんですけど、フェアリーテイルのお話も作って欲しいです!! (2020年4月29日 22時) (レス) id: 8bfe17f4aa (このIDを非表示/違反報告)
抹茶って美味しいよね(プロフ) - 初めまして。今更ながら感想を書こうかと... (2020年4月29日 22時) (レス) id: 8bfe17f4aa (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 休暇を求める者さん» 大笑い♪♪冒頭しか、読んでいませんが、ルパン三世の登場人物そものですね。恐れいりました♪♪ (2019年12月17日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
なーなー@今日俺#最高かよ。(プロフ) - ふわぁあ!何日か来れていなかった間に絵が……追加されている…!!カッコいい!!大好きです!! (2019年4月25日 23時) (レス) id: 4de978dd23 (このIDを非表示/違反報告)
休暇を求める者(プロフ) - 灯籠さん» ほぁぁ良くぞ細かいところにお気づきで…:(;゙゚'ω゚'):時間のある時に一通り確認しようと思います、ありがとうございます。 (2019年4月22日 17時) (レス) id: ab4c20710e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:休暇を求める者 | 作成日時:2018年12月28日 17時