異世界放浪者は浪漫を求めていない。[ルパン三世]

episode12 まだまだ未熟な放浪者 ページ15

現在Aがいる町の名を、メーアスブルクという。カラフルな外壁に目を引かれ、まるで絵本の中にいるような気分になる。


『…うん、駄目だ。』


さっぱり分からん。


そもそも、この世界でどんな異変が起きているのかが分からない。毎度毎度、自力でそこから探らなければいけないのだ。
しかし、救いの手が無い訳では無い。異世界に飛ばされる時は、決まってスタート地点が、異変が起きている現場の近くなのだ。
あとは、直感頼み。理屈や論理的な考えばかりに固執していると見えない事もある。彼女の場合何かに迷った時、これ程頼りになるものは無い。

残念ながら、今日はその直感が働かないようだ。パタンとノートパソコンを閉じ、携帯で図書館や本屋を調べる。
どうやら10分ほど歩いた所に、公立の図書館があるらしい。荷物をまとめ、飲み終わったコーヒーカップとドーナツの皿をまとめた。


(さ、行こ……………__________________？)


目的地へ向け十数歩いた程。建物と建物の間から、かすかに会話が聞こえてきた。普段なら素通りだが、薄暗い中から見えたジャケットの色と、直感で感じた気配に足を止めてしまった。





「_________…引き渡す……_________」


「_________捕まった？……_________」


「_________…秘宝が………_________」





「_________ドナウの女王……_________」





(…何の話？)


会話の主は2人だろうか。

引き渡す…ドナウの女王をだろうか。誰に？

捕まった、とは誰が誰にだろうか？

しかも……………秘宝って聞こえたぞ。



一人で推測を続けていると、2人組は奥へ行ってしまった。
危険は承知だが、それを回避出来るように今までの経験があった筈。これを逃してはならない。
意を決し、Aは2人組の後を追った。


(にしても、意外と入り組んでるなこの裏路地…。)


右へ曲がり左へ曲がり、もう一回左へ曲がり……来た道を戻れと言われても、かなりの確率で迷いそうだ。
しかし、今追っているあの2人はどこを目指しているのだろうか。出ようと思えば広い道に出られるのに_________









ちょっと待て。




わざとか？






だとしたら「こ〜ら、駄目だろ。子供がついて来ちゃあ。」



『ひょえっ！！？』


「"ひょえ"って……。」


突然背後から話しかけられたことにより、間抜けな声がでてしまったA。振り向くと、苦笑いしながら両手をズボンのポケットに突っ込む男性が立っていた。

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