episode 29 盗まれた怪盗 ページ31
『貰ったメモに書いてあったからね。』
「あ、そういやそうか。じゃあ君の名前教えてもらっても…」
『ああごめん、兎乃峯Aです。…そうか!あのメッセージカードはそういう意味か。』
そう言うとメモアプリにポチポチと文字を打つA。
黒羽がハッとした顔でAを見ると、彼女は周囲に見えないよう画面を彼に向ける。
『あの後無事に帰れたみたいだね。』
"キッド"
「...…おや、なぜ気付いたんですか。」
先程までのわんぱくな青年とはうってかわって、足を組み大人びた表情を見せるキッド。
『顔だな。逆に何故バレないと思った。』
「意外とばれないんですがね...それでも気付かれたということは、貴女の目に私の姿が焼き付いていたと自惚れても良いんでしょうか。」
『ま、まあ...。』
「私もです。貴女の顔を思い出す度、後悔していました。」
隣に座るキッドの顔を見ると、切なそうに笑っていた。
「貴女の名前を何故聞かなかったのかと、それこそ夜も眠れないほどに。」
『ははっ、怪盗に甘酒渡すような変人の名前をそんなに知りたかったのか?』
「……貴女は知りたくならないんですか、自分の恋心を盗んだ人の名前を。」
『________え』
彼の言葉の意味が遅れて頭に浸透してきて、Aは唖然とした表情で固まった。
「おや、驚いた表情も愛らしいですね。"A"さん?」
『ほ、本気で言ってるのか…。』
「どちらも本気ですよ。さっきのも、今の感想も。」
『…吊り橋効果みたいな物なんじゃないのか。この間の夜のは。』
「その吊り橋で凍える私を暖めてくれたのは、他でも無い貴女ではありませんか。
……そんなに、否定したいですか。私の想いを。」
恥ずかしげもなく、自分の胸元を触ってみせるキッド。眼差しは真剣だった。
『そうじゃない。けど私は_』
応えられないと言いかけると、キッドに人差し指で唇を閉じられてしまった。
「その先は聞く気がありません。私は怪盗です、"No"の選択肢を盗んでしまえば良いだけの話ですから。」
Aの手を取り、ウィンクをする。
『キ、キザだなあ…』
「お嫌いですか、こんな男は」
『…は、まさか』
Aの反応が予想外だったのか、目を丸くして固まるキッド。
『お、可愛い可愛い。』
「な、ちょ…!さっきの仕返しか!?」
『いや?本心だが。』
「うぐ…!!」
『ははは。』
Aの大人びた対応にまんまと振り回されるキッド。
いや、これは完全に黒羽快斗。
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休暇を求める者(プロフ) - 鹿野ユズナさん» ありがとうございます。すみません結構変えました…後半も新規ストーリーぶっ込んでるので更に混乱させるかもしれません。ごゆっくり… (2021年8月25日 14時) (レス) id: 4630244e4e (このIDを非表示/違反報告)
鹿野ユズナ(プロフ) - だいぶ内容が変化していて「あれ?!こんな小説だったっけ?!」とパニクりました。完全に自分の記憶飛んでるだけでした。頭の片隅にちゃんと居ました。リメイクお疲れ様です。1から読み直してきます。 (2021年8月25日 2時) (レス) id: 6c05b173a1 (このIDを非表示/違反報告)
休暇を求める者(プロフ) - リリーさん» わーありがとうございますこんな夜中まで更新に気づいて下さって…!!後半は結構新規ストーリーになっているので、ぜひお付き合いいただけましたら幸いです。 (2021年8月21日 0時) (レス) id: 4630244e4e (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - 休暇さん、フルリメイクお疲れ様です!五エ門との電話や安室さんとのやり取り等、前とすごく変わってて、これ絶対すごく大変だ…と思いながら読ませて頂いてます。貴方様の作品すごく大好きなので、兎乃峰さん共々無理はしないで下さいね、続編も楽しみにしてます! (2021年8月21日 0時) (レス) id: d0e6075152 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 冒頭のコメント失礼します。今度は、名探偵コナンの世界ですか。へ!?赤い彗星!?!?なんで、シャア アズナブルが?? え?冗談!?!? (2019年12月29日 10時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:休暇を求める者 | 作成日時:2016年5月12日 18時