Adam den【東海オンエア】 (ページ8)

今日:3 hit、昨日:11 hit、合計:30,025 hit

あなたのためにページ8

Aside

｢───────あの頃の正直な気持ち。今言ってみた。｣

私はただ呆然とするばかりで、頭の中はあの日の景色出埋め尽くされていた。

帰り道に半ば強引な約束を取り付けたのは覚えてる。

しっかりとね。

でも、その時のとしみつの気持ちなんて分かってなかった。

｢俺はAに対してビビってたわけだぁああ！！｣

開き直った、も言うように大の字に寝転がるとしみつ。

『なん、それ……。』

私に、ビビってたって？

なんで？

｢才能あるやつ見ると怖ーよ。あの頃は俺が弱かった。｣

才能？

私に才能なんてあるのか？

｢それに、努力もできる。めっちゃ尊敬してる。｣

その瞬間。

私はやっと認めて欲しい人に認めて貰えた気がした。

私には他の誰からも賞賛なんて要らなかったんだ。

ただ1人、こいつだけ。

『……っ、』

｢え、ちょっ、｣

ぼやける視界の奥で慌てるとしみつ。

あぁ、泣いてるのか、私。

｢あー、えっと……ん。｣

としみつか腕を大きく広げるのがわかった。

私は間髪入れずに飛び込む。

あの日の匂いがした。

｢──────おはよぉ……って、なにしてんの！？｣

抱き合ったまま、声のする方を向く。

てつやがボサボサ頭で扉の前に立っていた。

｢ちょっと、虫ざぁぁぁぁぁあん！！！｣

叫び出してしまった。

『虫さんおらんよー。』

｢買い出し行った。｣

私たちはそのままてつやに言う。

てつやはドタバタと私たちの方に向かって歩き、ベリっと肩を引き剥がした。

｢異性不純行為だーーー！｣

そう言っててつやが私の胸に飛び込んでくる……のを、としみつが振り払った。

｢俺らは友情確かめあってただけだ馬鹿。お前もAに触んな！｣

｢は？触ります、どんどん触ります。｣

｢はぁ！？｣

ここからは2人のどうしようもない言い合いが始まるので私は無視。

立ち上がって、台所に。

冷蔵庫を開ける。

『なんもないやん……。』

牛乳パックが見えたけど見えないふりをした。

てつやの家の乳製品は危険だ。

｢A。｣

すぐ後ろにとしみつが。

あれ、てつやは……

｢俺、まだ音楽やりたいんだよ。｣

……としみつ。

｢今から約束果たそうとしたら、遅いかや。｣

そんなことない。

私は、君の、その言葉を待っていた。

｢一緒に、音楽やろう。｣