Adam den【東海オンエア】 (ページ7)

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としみつside

小さな恋のうた。

俺らはこの曲が好きで、何回も歌ってきた。

自分で言うのもなんだけど、音域の広い俺らに丁度いい曲なのだ。

―――♪♪

俺が主旋律を歌って、Aがハモリパートを歌う。

独特なハモリだけどやけにしっくりくるしお洒落なんだよな。

そういうとこ、尊敬するし……ちょっと嫉妬する。

いや、ちょっと所じゃない。

だいぶ嫉妬。

『私、としみつのために曲作りたいの。』

Aはいつだってそう言う。

嬉しい半面、俺にこの天才は荷が重いんじゃないかと思ってしまう。

独学で既に何曲か試作して、曲のデータをパソコンに打ち込む姿を見た事がある。

真剣な瞳の奥に、野心と音楽を純粋に楽しむ心が垣間見れた。

俺の知らないとこで、俺のいない所で、Aは自分の世界を作ってる。

『私、音楽大好き。』

Aの音楽にとって、俺はなに？

『伝えたいこと、音楽に乗せて伝えられるなんてロマンチックじゃん。』

Aのロマンに、俺は必要？

……これは、嫉妬じゃなかった。

Aへの勝手な期待と、勝手な自己投影。

いつか必ずどこかで成功するであろうAに、こう言うための。

｢やっぱ、お前すげーよ。｣

『へ？ほんと？照れちゃうなぁ。でもこのハモリ、実は昨日の夜に思いついてさ。ちょうどよくとしみつがカラオケに誘ってくれたから今日歌えたの。』

にっこにこのA。

……可愛いんだよなぁ。

｢次なに歌う？｣

『じゃあね──────────』

4時間ぶっ通しで歌い続けた帰り道。

もちろん、暗いし家まで送ってるんだけど、不意にAが言い出した。

『としみつさぁ……自分の力、過小評価してない？』

何故かドキッとした。

そのまま続けて言うA。

『偉そうにごめんね？なんか自信なさげだったから。』

Aの目にはそう映っていたのか。

弱気な俺。

かっこ悪い。

｢そんなに、弱々しかったかや。｣

『今日は特に。』

特に……。

『ねえ、約束しようよ。私と一緒に音楽やるって。』

｢え？｣

『なに、やりたくないん？』

やりたいよ、やりたいけど……。

自分に自信が、

｢やる。絶対、いっしょに。｣

あれ、なに言ってんの俺。

『やったぁ！！正式にOKしてもらえたー！』

飛び跳ねるA。

てか、俺、なんでこんなこと言った？

本当は怖気付いてるのに。

『約束だからね。』

はにかむ君の表情が目に焼き付いて、離れない。