#３５. -MOKA side- ページ35
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──────────ガシャンッ
「 … 坊ちゃん？」
大きな物音にして坊ちゃんがスマホを落としたのかと思い、思わず声を掛けてしまった。
『だ、れ … ？』
瞬間的にやばいと感じ、プツッと電話を切った。
どうしよう。
一番やってはいけないことをやってしまった。
あの日以来、本家に帰ってこない坊ちゃんに定期的な連絡をするのが私の役目。
いつもはメールでしていたのに、今日に限って電話をしてしまい。
だって … あの方の声が聞きたかったから …
けど、それが間違いだった。
私のただの我が儘な欲が、坊ちゃんの幸せを奪うことになったら … ？
「私は … クビ … 」
電話に出た声の主はきっと一之瀬 A様。
きっとじゃない、確実にそう。
だとしたら今頃 …
動揺と焦りと不安がどっと一気に押し寄せてきた中に一つだけ。
私の中で一つだけその感情とは全然違うものが大きくなっていく。
「このまま、別れてしまえば … 」
そうしたら坊ちゃんは私の元に戻ってくる。
また前みたいにたまに帰ってこられたと思ったら夜は乱暴に抱かれて、朝起きたらもういらっしゃらない生活。
他にも女性を何人も作って、何の感情もなく要らなくなったものは捨てていく。
それでも私の所には必ず戻ってきて下さる。
「それが、幸せだったのに … 」
例え私を道具として見ていても、私はあの方をお慕いしている。
それは今もそう。
いつからか生まれてたこの感情は、坊ちゃんが女性を増やしていくのと比例するようにどんどん大きくなっていって。
叶うはずのない想いを胸に閉まって過ごしてたのに。
本当の感情をしまい込んで、自分に嘘をついてきた。
それなのに。
「あの人のせいで … 」
突然出てきたあの女性のせいで全て一瞬でなくなった。
坊ちゃんに言われて調べてわかったことは、悲劇のヒロインだってこと。
ただの遊び相手として選んだ女性だったのに、いつしか坊ちゃんの心は奪われてて。
私のところにも帰ってこなくなって。
私のことなんて、どうでも良くなったんですか？
今、坊ちゃんが幸せなら私も幸せでございます。
なんてこと、冗談でも言いたくない。
「こんなメイド、いらなくなったんですか … 坊ちゃん … 」
しまい込んで押し殺してた感情にどんどん支配されてく。
またあの生活に戻りたい。
ならどうすればいい？
「壊せば … いい」
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作者名：夜天 | 作成日時：2017年3月9日 19時
