Secret《S.S+K.N》 (ページ27)

今日:15 hit、昨日:4 hit、合計:114,856 hit

#２７. -SHO side- ページ27

.

───────12年前の3月

黒髪の襟足の長い髪を片手でかきあげ、ちらっと左耳からはリングピアスが顔を覗かせてた。
昼間からよれた泥だらけの服に顔の傷をそのまんまにして歩いてる俺のことを、すれ違う人たちがチラ見して行く。

「ってぇ … 」

歩く度に足にジワッと広がる痛みがかろうじで現実に引き止めてくれている。

ポケットの中では絶えず携帯が鳴り続けていてるが、そんなのどうでもいい。

「何やってんだ俺 … 」

高校卒業間近の昨日、喧嘩をした。

退学にならなかったのはマシかもだったけど、内定の決まってた会社からは内定取り消しの連絡がきて。
学校に呼び出されて親からもセンコーからも「何やってんだ」「社会人の自覚はあるのか」だのさんざん聞かされた挙句、見放された。

同級生にもその話が広がったから今携帯が鳴り続けてんだろうな。

今持ってるのは充電の残り少ない携帯と、1000円あるかないかぐらいの小銭。

昨日の夜、そのまま学校から飛び出してきたから何も食ってねぇし、そろそろ気力も尽きてきた。
そんな俺なんかお構い無しに鳴り続ける携帯にイラッときて、乱暴に携帯の電源を落とした。

ふと見上げた看板にあった町名で普段歩いてくるようなところではなかった。
もう何処をどう歩いてきたのかわからない。

「どうやって帰んだよ、これ。笑」

あ、帰んなくてもいいか。

このまま全て捨てて …

ふとショーウィンドウに映った自分を見て立ち止まる。
これが人生終わった少年の顔ですか。

「ブッサイクな顔」

そう呟いた時ちょうど足の傷口に何か当たり、ズキッと疼く。

「 … っ」

当たったものの正体を確かめようと視線を落とすと、小さなボールが転がっていた。
そのボールを拾い上げると『ダメッ』と甲高い子供の声がして辺りを見渡す。

『それ、Aのなのぉ！！』

幼稚園か小学生かぐらいの女の子が向かいの公園から車が行き交う道路など気にせずこっちに向かって走ってきていた。

「ばっ！？あぶねぇ！」

咄嗟のことだったのに勝手に体がその子の方へ動いていた。

女の子に向かって車が走って来る中、痛い体なんて今はどうでもいい。
俺は車などお構い無しに道路へ飛び出し、その子を抱えて向かいの公園の方へ走り抜けた。
周りの人が「大丈夫！？」「怪我ない！？」とか声を掛けてくる。

昨日とは大違いだな。

.