#8 -RYOTA side- ページ8
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1人になった音楽室。
ガラーンとした僕だけのステージ。
僕だけのコンサートホール。
「盗み聞きは良くないって前にも言わなかった?」
でも、僕だけじゃなかったみたい。
教室の外に気配を感じて声を掛けると、扉の影から龍友くんが現れた。
龍「エスパーか、お前は」
「そうなのかも、今日2回目だよ」
本日2回目のお客様は数原龍友。
僕の音を唯一「寂しい」といった男。
なんにも言ってないのに勝手に隣に座ってきて、僕のピアノを横取りしようとする。
「ねぇ、今僕が弾こうとしてたんだけど」
龍「えぇやん、お前家にも同じのあるんやろ」
確かにこれと同じ … いや、もっと高いグランドピアノが家にあるけど環境が違いすぎる。
息苦しくて、冷たくて、温かさなんてまるでない。
龍「 … はいはい、その僕は可哀想な息子なんですアピールいらんから」
「そんなのっ、してな … 」
────ムニュッ
龍「学校の王子に、そんな顔は似合わへんぞ」
頬を引っ張られてとんでもなく情けない顔をしてるんだろうな、今。
こんな僕にでも、こうして笑わせてくれる友達がいる。
「ひたい(痛い)」
引っ張られた口から出た言葉を聞き取ってくれた龍友くんは手を離して「わりぃ」と笑う。
どうやら今日は楽器屋のバイトがない彼は、僕をファミレスに連れ出そうとしてここにきてくれたらしい。
「それは … 龍友くんのおごりですか?」
龍「は!?んなわけあるか!今月カツカツなんやっ、アホ」
「ごめんごめん。笑」
龍「あ、さっき2回目って言っとったけど、誰かきたんか」
「うん、可愛い後輩ちゃんが」
コロコロ表情が変わって、最後には辛そうな顔をして出ていった彼女。
音楽を楽しいと思えているんだろうか …
最後、音を聞きたいと言った時に手が震えてたのを見逃さなかった。
怖い思いをしてまで無理やり弾かせるのは流石に可哀想でああ言ったけど …
「あの子の音、聞いてみたかったな … 」
龍「涼太が女の子にそんなこと言うん初めて聞いたわ」
「え、そう?」
龍「なんかの予兆かぁ?変なことには巻き込まんといてな。笑」
「それはどうだろ。笑」
そんなことを話しながら、僕らは茜色に染まる教室から出ていった。
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夜天(プロフ) - 美心さん» 亜嵐くんの誕生日ですか!?羨ましい(泣)移行先でもよろしくお願いします! (2018年11月10日 9時) (レス) id: 11791f34cd (このIDを非表示/違反報告)
美心(プロフ) - 私は8月4日に参戦して来ました!更新頑張ってください! (2018年11月9日 22時) (レス) id: 3a297c68b9 (このIDを非表示/違反報告)
夜天(プロフ) - 佐野玲於の名無しのfanさん» ありがとうございます!まだまだ最後を迎えるのは先なので最後までどうかお付き合いください! (2018年10月16日 7時) (レス) id: 11791f34cd (このIDを非表示/違反報告)
佐野玲於の名無しのfan(プロフ) - オチが気になる〜!!読み終わったとき心臓がキュンキュンします!続き頑張ってください! (2018年10月16日 0時) (レス) id: 24c1463825 (このIDを非表示/違反報告)
夜天(プロフ) - あゆんさん» ありがとうございます!これからもきゅうってさせちゃいます!! (2018年9月30日 6時) (レス) id: 11791f34cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜天 | 作成日時:2018年9月10日 23時