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玲於の居なくなった車内はすごく静かだった。
直己さんが気を利かせてクラッシック音楽を流してくれたのがせめてもの救い。
いたたまれなくなった私は、涼太先輩に甘えることなく体を起こして座り直して重たい口を開く。
『どうして … 玲於に突っかかるんですか … 』
「どうしてだろ」
『ふざけないでくださいっ!!』
声を荒らげた私に目を丸くして驚く涼太先輩。
『私は … 彼の居場所を奪った … それは、もうどうしようもないことをしたって … 自分を責めて … 』
嫌な女だ、私。
『責めたって、彼の笑顔が戻ってくるわけじゃないし … だからっ、私の音で彼の笑顔を取り戻したかったのに … 』
こんなの、何も出来ない私の八つ当たりだ。
『だから … 、玲於に触れないでください … っ』
「Aちゃんは、僕の前で全然笑ってくれないんだね」
頬に添えられた手は、頬を伝う涙を親指で拭ってく。
「初めて会った日も、電車の中でも、さっきの昼休みも … そして今も、泣き顔ばっかり見てる気がする」
先輩は寂しそうに微笑む。
「僕にも … いや、僕だけにAちゃんの笑顔 … 見せて欲しいな」
『や … 、待って … っ』
「もう、待てない」
その時、急ブレーキを踏んで車が急停止した。
直「すみません、赤信号でした」
助かった … って、言っていいんだろうか。
あのままだったら、きっとキス … されてた。
「最低、直己さん。今のはないよ」
直「以後気をつけます」
それから家に着くまでの時間、涼太先輩は話しかけてもこなかったし触れてもこなかった。
家の前で降ろしてもらい、彼にお礼を言った時も特に何も無く。
ただいつものように「さよなら」と笑顔で手を振ってくれただけ。
それから2日間、熱に苦しめられて学校を休んでる間、帰り際に交換した涼太先輩のLINEは毎日送られてきた。
でもそれは当たり障りのない内容で。
スタンプで「大丈夫?」「ファイト!」「待ってる」なんて可愛らしいものばっかり送ってきてくれて、私もそれに「ありがとうございます」と頭を下げてるキャラのスタンプで返すだけで終わる。
一方、玲於からはなんの連絡もない。
ねぇ、あの時のキスは幻だったの?
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夜天(プロフ) - 美心さん» 亜嵐くんの誕生日ですか!?羨ましい(泣)移行先でもよろしくお願いします! (2018年11月10日 9時) (レス) id: 11791f34cd (このIDを非表示/違反報告)
美心(プロフ) - 私は8月4日に参戦して来ました!更新頑張ってください! (2018年11月9日 22時) (レス) id: 3a297c68b9 (このIDを非表示/違反報告)
夜天(プロフ) - 佐野玲於の名無しのfanさん» ありがとうございます!まだまだ最後を迎えるのは先なので最後までどうかお付き合いください! (2018年10月16日 7時) (レス) id: 11791f34cd (このIDを非表示/違反報告)
佐野玲於の名無しのfan(プロフ) - オチが気になる〜!!読み終わったとき心臓がキュンキュンします!続き頑張ってください! (2018年10月16日 0時) (レス) id: 24c1463825 (このIDを非表示/違反報告)
夜天(プロフ) - あゆんさん» ありがとうございます!これからもきゅうってさせちゃいます!! (2018年9月30日 6時) (レス) id: 11791f34cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜天 | 作成日時:2018年9月10日 23時