9 ページ9
○
「"カッコイイ!!"とか、"ステキ!!"とかはなくても、
「ほら、こういうのは、さすがに嫌だろ?」
そう言った男がミヒャエルへ向けて掲げていたのは、女物のフリフリとした服で。
顔をゆがめながら頷くミヒャエルに、男は「自分がいいと思ったものをえらべばいいんだよ」と微笑んだ。
よく分からないテンションで、分かりやすい例え話をした男に促されるまま、ミヒャエルは自分の服選びを始めた。
「着たい」と思うことがなくても、「着たくない」と思うものはある。だから、「着てもいい」と思えるものを探すようにした。
兄弟だと勘違いしているらしい店員が、ニコニコと微笑ましげにこちらを見つめながら、ちょこちょこと売り場を歩き回るミヒャエルたちの後をついて回っている。
いなかったからこうだ、と言い切れる訳ではないが、その生暖かい視線のせいでどうしても落ち着かなかった。
実際ミヒャエルたち以外に客はいなかったし、男のほうもさして気にしていない様子だった。
そんな状態なので、「暇なのか」と内心で悪態をつくものの、口には出せなかった。
○
89人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:susu” | 作成日時:2023年8月18日 22時