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入浴を終えてミヒャエルが洗面所から出ると、どちらのベッドがいいかと聞かれたので、とりあえず自分から近い方へと上がれば、男はもう一つ──窓側のベッドの端に腰掛けた。
「明日はちゃんとした服とか、買いに行こうな。」
「あした?」
日が沈むのはまだ先だ。どうせ行くのなら今日行けばいいのに。
というか明日も自分を連れて歩く気なのか。
この男の気まぐれは結構長く続くものだなと、ミヒャエルは感心した。
「貧困層と世間知らずは舐められる、こればっかりはどこの国でもそう変わらないからな。すこしでも身なり整えてからの方がいいだろ。」
ここへは風呂に入りに来たのだと言う男に、ミヒャエルはぽかんとした。
確かに風呂に入るのは久しぶりだ。
あの人が死んで、水が出なくなってからは入っていなかったから。
だがしかし、言葉のとおりであるとするのなら、
この男はミヒャエルの体が目当てなわけではなく、みすぼらしいすがたをしたミヒャエルを哀れに思って情けをかけているというわけでもない。
どちらかというなら、これは──。
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作者名:susu” | 作成日時:2023年8月18日 22時