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「今更」 ページ19




今のは幻だったのだろうか。
もしそうなら、全部そうだったらいいのに。


Aの頭に、数十分前の光景がフラッシュバックする。



教室の柔らかな光、揺れるカーテン、舞う花びらの中で、煉獄と知らない少女が_____





「っ………ぅ……ッ!!」





Aにはもうこぼれ落ちる涙すら受け止めることができなかった。



先生、先生。大好きな先生。

ずっと待っててくれたのに。

それなのに。





「……わたしが……………」





気づけなかったから。











Aには親がいない。

物心ついた時から両親の喧嘩が絶えず、母親の泣き叫ぶような声を布団の中で聞いていた。





「……おかあさん」


「なぁに?」


「ほっぺた、いたくない?」


「………ふふっ、だいじょーぶ。Aと一緒にいたら、痛いのなんて忘れちゃった」


「ほんと?」


「うん、ほんと」


「……そっか………へへっ、おかあさん大好き」





その時見た母の顔が目に焼きついて離れない。
崩れそうに微笑む母の顔が。



それからしばらくして、両親は離婚した。
Aは母親と共に実家に戻り、祖父母と四人で暮した。



しかし、やっと訪れた平穏な生活は長くは続かなかった。


Aの中学校入学式を控えた一週間前、母親が急死したのだ。



死因は過労と衰弱死だった。



家を飛び出るように離婚し、その後も頻繁に元夫に迫られ精神的な疲労が蓄積されていた。

それでも愛する我が子のため懸命に働く最中、突然倒れてしまったのだ。



母の死を境に、Aは物事に対する関心を示さなくなった。同時に記憶や感情も極端に薄くなった。

文字通り、逃避行動だった。


幼い頃母親によく読んでもらった絵本が心の支えになっていた。











月日は流れ、母の死とようやく向き合えた頃。


高校に入学したAは元の性格なのか、酷く淡白な性格に育った。
相変わらず必要以上の記憶は乏しいままだった。



そんな中、Aは体験入部で美術室に足を運んだ。

家には祖父母がいるものの、その日は特にやることも無く暇つぶし程度にと思っていた。


ところが、これが予想以上に彼女の興味を引いたのだ。


まるで昔読んだ絵本のワンシーンのような作品の数々に、Aはすっかり心を鷲掴みにされたのだ。


それからというもの、美術教師すら若干引き気味になるほどそこに入り浸ったAはある日、一人の剣道部員に出会う。

と、貴方は→←伝えたかったのです



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塩じゃけ(プロフ) - モカァコさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです(泣)コメントを下さるだけで十分お気持ちは伝わっておりますよ( ´ ` *) (2020年1月2日 12時) (レス) id: a1c423deca (このIDを非表示/違反報告)
モカァコ - すごく面白いです!やっぱり表現の仕方がめちゃくちゃ好みです!なんだか見てる訳でもないのにその場の想像ができます!私は語彙力が無いですねwww (2020年1月2日 10時) (レス) id: c6bb044a72 (このIDを非表示/違反報告)
塩じゃけ(プロフ) - あやのさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎて画面直視できませんでした(笑)実際、書く際によく意識する事だったので本当に嬉しかったです。ありがとうございますm(*_ _)m (2019年12月31日 1時) (レス) id: a1c423deca (このIDを非表示/違反報告)
あやの(プロフ) - 塩じゃけさんの小説は何か引き込まれるようなものがあってとても好きです!    特に煉獄先生が桜を見ている描写などは実際に自分もそこにいる気がして読んでいてとても面白いです! 応援してます! (2019年12月30日 23時) (レス) id: ec8abc2a53 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:塩じゃけ | 作成日時:2019年12月1日 22時

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