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校内に響く始業のチャイムを教室以外で聞くのは2回目かな
前回は彼女と一緒だったな
どうでもいい事は浮かんでくるのに、目の前の湧に話すべきことは何も浮かんでこない
「...なぁ、平塚は何を知ってんの」
...湧に、どこまで話せばいい？
やっぱり、全てを伝えるべきだろうか
「...昨日、お母さんとショッピングモールで買い物してたんだって」
「でも、途中で仕事が入っちゃったみたいでそっから1人だったみたい」
とりあえず、さわりだけ話せば湧はそういうことか、と1人頭を抱えて
どういうこと？って
湧と何かあったのは事実だけど何があったかは結局オレも分からず終い
「昨日、いとこたちとオレもショッピングモール行ってたの。でも俺のスマホ、平塚から電話来たあと充電切れてさ、」
夜ご飯を食べ家に帰って開いたその画面には、彼女からの着信で埋め尽くされていたと湧は言った
「...いとこって、例のお姉さん？」
「あぁ。その弟と3人で出かけてた。」
「見られてた、のかな」
でも、見られてたにしても、そのお姉さんと湧の間には弟さんが居たわけで
彼女があんなになってしまう程のことなのか
...そんなことが通用する彼女ではないことは、重々承知しているのだけど。
「...それで、平塚はなんでそんなこと知ってんの？」
いつもより低くて少し掠れた湧のその言葉がオレの胸の中に沈む
「...たまたま外で見かけて、1人だったからおかしいなって.......それで家の近くまで行ってみたら、もう暗いのに、明かりが点いてなくて、」
事実を話しているだけなのに、途切れ途切れになってしまうのは、その先の話を湧にするべきなのか分からないままだから
「......何も隠すなよ、」
「え、」
「全部、教えて、頼むから...」
そう言って俯いた湧の目から零れたのは綺麗な涙で
そうか、湧も彼女と同じなんだ
傷付いてるのは、慰めるべき相手はここにもいたんだって
「......A、手首切ってた...」
自分の口から出た言葉は、自分でもびっくりするくらい震えていた
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作者名：きい
| 作成日時：2021年3月4日 23時
