きっと、幸せ (ページ5)

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■ ページ5

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季節は春、

日が落ちるのが遅くなったとはいえ午後６時ともなれば部屋の明かりは必要なこの時間

彼女の住むマンションの、彼女の住む2階の角部屋には明かりが灯っていなくて

お母さんとどこかに出かけているなら違和感のないそれも、さっき見た彼女であろう姿を思い出すとやっぱり不自然なわけで

心配し過ぎかな、とも思うけどやっぱり気になって
気づけば彼女の部屋の前に立っていた

1回だけチャイムを押して、反応がなければ帰ればいい

ざわめく胸を抑え、押したインターフォンに応答は無くて、勘違いだったかなとホッとなでおろした胸

それとは裏腹に、どこかザワザワするこの感覚にいつの間にか手をかけていたドアノブはいとも簡単に部屋の扉を開けてしまう

「......A？」

恐る恐る呼ぶ声に返事はなくて

だけど、玄関には見慣れた彼女のスニーカーがぽつんと寂しげに放置されている

Aに初めての彼氏ができる前まではよく遊びに来ていたここは、少しだけ殺風景になった気がする

ドクドクと五月蝿い心臓は、この部屋で起きてる何かを示唆しているのだろうか

ドロボウでもないのに足音を忍ばせ向かった部屋の一番奥にあるリビングには誰もいなくて

踵を翻して目に入ったのは、締まりきっていない左側の部屋

リビングの窓から漏れる月明かりと過去の記憶を頼りに進むそこからは人の気配なんて感じなくて

だけどきっといるそこ、ドアノブに手をかけそっと開いた先には壁を向いてしゃがみこむ彼女の姿

「A...、？」

聞こえているはずのオレの声に少しも反応を見せない彼女

部屋の明かりを付けることも忘れ近付いた先、俺の目に飛び込んできたものはあまりにも衝撃的で

「...っ、ねぇ、何してんの、！」

真っ白な腕を伝う紅をただ眺めていた彼女の反対の手から奪い去った小さめのそれが

カタンと音を立て床に転がった