きっと、幸せ (ページ29)

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「A、引っ越そっか」

『え？』

揃えられた靴、畳まれたニット、お気に入りのパンツ

どれもこれも俺が脱いだ時と若干形が変わってて
惜しいな～オレは右腕の方から畳むんだよ？なんて

『いつ？』

「今日」

『随分急だね』

午前で終わった講義、今から準備すれば余裕で間に合うだろう

私は翔馬がいるならどこでもいいよ、なんてギュッとお腹に回った華奢な腕

その手を解いて顔を合わせれば、コテンと首を傾げてオレを見つめる

ね、そんな色のアイシャドウ持ってなかったでしょ

全ての楽しみを奪ったわけじゃない
手の届くところに置いてあるメイク道具

確かにオレはポンコツだし細やかな変化はあんまり気付かないタイプだけど

さすがにAの変化には気付くよ

彼女を繋ぎ止めるそれは、もっと頑丈で絶対取れないやつも売ってたけど

彼女がオレから離れるわけないって

敢えてベルト式を選んでいたけど、また買い直そうかな

『準備、私も手伝うよ？』

「ありがと、でも、」

掴んでた手をそのままベッドに押さえつければ、オレを見上げる彼女の目は真ん丸に開いてて

『時間、大丈夫なの？』

「うん、だからさ、この部屋ももう最後だし、」

「１回...ね？」

鼓膜を震わせる甘い吐息、甘い声

オレを求める彼女の全てが愛おしくてたまらない

『しょ、ま...！』

もっと、もっと、俺に縋って？

だってオレ以外に

キミを幸せにできるやつなんていないんだから＿＿＿

...end