きっと、幸せ (ページ11)

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■ ページ11

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元木side

『今日何食べる？』

「んー、オムライスは？」

またー？と、口を尖らす彼女を映す視界の片隅で
親友は柄にもなく小さな溜め息を零していた

勉強なんかで落ち込むようなやつじゃないし、アイツから色恋沙汰なんか聞いたことも無いから

きっとあれは俺たちのせい

俺も彼女も、平塚を巻き込みすぎたんだ

ボケーッとしてて何も考えてなさそうな雰囲気とは裏腹に、色んなこと感じとって考えて、人一倍誰かを思いやれる奴

そんな平塚の優しさに俺たちは居心地が良すぎてついつい頼ってしまった

『ねぇ湧聞いてる？』

視線を戻せばムスッとした顔が俺を睨んでて、眉間に寄ったシワをツンと触れば
うわ、誤魔化した、なんて笑いながら俺の真似をする

俺の眉間に伸びてきた腕は、夏なのに長袖のカッターシャツを纏っていて

少しだけはみ出た白いそれは何度見ても慣れない

「ね、それいつまで付けてんの？」

『んーずっと？なんか安心するの』

包帯付けてると安心するとか意味わかんねーけど、彼女が言うなら本当なんだろう

俺からしてみればそれはトラウマでしかないんだけどな

そんなこと、本人には言えないけど

.

今日も2人で沈んだベッド
そこから見えた時計はもうすぐ2つの針がテッペンで重なろうとしてる

あの日から、Aのお母さんが帰ってくる日以外はほぼ毎日彼女の家にいて

寝息が聞こえてきたら家に帰るのが日課になった

お陰で受験生のくせに学校では居眠りばっかだけど
今は俺の隣ですやすや眠る彼女のこと以外は考えられそうもない

「...おやすみ」

夏の暑さに寝苦しそうな彼女の頭をそっと撫で、今日も彼女の家を出た