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あの時の私は、頭がおかしかった
＿＿＿1年前、高3の夏
受験生の私たちには夏休みなんてものはなくて、補講や塾で勉強漬けの毎日だった
そんな中でも、恋人がいる人達は時間を見つけて癒しを求めて、忙しいのにどこか幸せそうで
少し羨ましかった
その日は模試で学校に来ていた
昼休み、いつもの様にクラスでも目立たないようなグループ3人で、お弁当を広げていた
その中の1人が、私たちには縁遠いはずだった話をし始めたんだ
"私先週ね、彼の家に泊まったんだ"
少し恥ずかしそうに話す彼女から、何があったのかは明らかだった
"え、早くない？"
"そんなことないよ。むしろ遅いくらいでしょ。私たちもう18歳だよ？"
私なんて置いてけぼりで進む会話
もう18歳、という言葉が私の頭に引っかかった
私と同じで彼氏の居ないもう1人の友達はどうだった？とかグイグイ質問をしていたけど、私の箸は止まったまま
"Aどうした？"
"...え？いや、幸せそうだなって"
誤魔化すように笑えば、その子はまぁ幸せかなって、照れ笑いを浮かべる
"いいなー、私も大学生になる前に初体験したかったな〜"
"まだ間に合うじゃん？"
"えーもう無理だよ、受験もあるし"
そう、私たちは受験生
もうそんなことに現を抜かしている場合じゃない
そう心の中を整理したとき、その友達は声を潜めてまさかのことを言い出した
"そいえば、2組の山田さん、元木くんと寝たって"
私の箸は再び止まった
"え、山田さんって、あのメガネの？いつも本読んでる？"
"そうそう、意外じゃない？元木くんって陽キャ女子しか相手にしないのかと思った"
私には無縁だと思っていた話は、どんどん私の近くまで迫っていて
自分だけ置いていかれているんじゃないかって、不安になって、焦って
その日の放課後、空き教室に1人身を潜めた
.
もう一度言う
あの日の私は
暑さのせいか、勉強のしすぎか、
頭がおかしかったんだ
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作者名：きい
| 作成日時：2020年12月19日 15時
