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逃げ出したのは、怖かったから
彼の部屋の奥からでてきた見覚えのあるその顔
なんで2人で部屋にいるの？とか、風邪は嘘だったの？とか、そんなの二の次で
彼の部屋にいたあの靴の持ち主に、私の過去をバラされることがただただ恐怖だった
結局人間、自分が一番可愛いんだ
階段を降りながら絶望が私を襲う
「待って！！」
だけど階段の踊り場、私の手首を掴んだのは間違いなく彼で
「ごめん」
何に対する謝罪なのか、私には全くわからない
『...離して』
とにかくこの場から逃げたかったのに
「あ！思い出した！！」
私たちの少し上の方からそんな声が聞こえて、暑さのせいかこれから彼女から発せられる言葉のせいか
ただの汗なのか冷や汗なのか
それとも恐怖や苦しさ、辛さからきた感情的なものなのか...
私の頬を1粒のそれが伝う
「八坂さんだよね？」
その問いかけに、私は顔を上げることなんてできなくて、その代わりに言葉を返したのはやっぱり彼だった
「は？お前なんで知ってんの」
「え、湧覚えてない？高校同じだったじゃん。
確か、1年の時私たちの隣のクラスだよ」
私は3年の時同じクラスだったけど、と付け加えた彼女は、高１の時、彼と美男美女カップルとして有名だった山本さん
彼女は地元に残ったと風の噂で聞いたことがあったのに、なんでここにいるの...？
だけどそんなこともうどうでも良くて
「A、そうなの...？」
多分もう、これで終わりだ
手首から伝わる彼の温もりを感じるのも
彼を好きでいられるのも...
全ては私のあの日の過ちのせい＿＿＿
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作者名：きい
| 作成日時：2020年12月19日 15時
