ウヌボレくん？ 2 (ページ35)

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『もう、ふらふらじゃん』

「へへ、飲みすぎたな」

彼の部屋の前に着いたのは23時45分

鍵出して？と言えばはい、とポケットから無防備に出されたそれを差し込んで、じゃあね、と帰ろうとすれば中まで送って？なんて言われてしまって

仕方なくお邪魔して彼をソファへと座らせる

『はい、お水』

「ん、ありがと～」

笑顔と共に伸びてきた手はプラスチックのコップを通り過ぎ、私の手首をグッと引っ張った

『え、ちょっ、』

折角注いだ水はばしゃりと床に落ち、いつの間にかソファに沈んでいた体と私を見下ろす彼

「でもね、俺とっくに酔いなんて覚めてんの」

『え...？』

「あ、店の中ではちゃんと酔ってたよ？」

ちょっと外の風浴びたら元通りだったわ、なんてさっきまでの可愛い笑顔じゃなくて、ちょっとだけイタズラ顔

「さっきのA、まじ可愛かった」

「いつも俺からだもん」

「たまにはAからしてほしくてさ～」

そんな驚くべきことを発しながら、時々落とされるキスと、ゆっくりと脱がされてく衣服

ほんと、こういう時だけ器用なんだから

「今日は素直じゃん」

あの初めて以来、どうしても恥ずかしさが勝ってしまいいつも無駄な抵抗をする私が、珍しくされるがままだからちょっとだけ驚いた顔を見せた彼だけど

『...だって、今日は湧くんの誕生日、だから』

あと10分だけど、と言えば最高のプレゼントじゃん、なんてまた優しくキスを落とされる

どんどん深くなるキスは、何度やっても慣れなくて

苦しくなる胸に、顔の横で絡められた手をギュッと強く握り返せば少しだけ名残惜しそうに離れる彼に、同じく名残惜しく思ってしまう自分は矛盾でしかなくて。

ふと、彼越しに見えた時計はもうすぐ二つの針がてっぺんで重なりそうだから、今日くらいちゃんと伝えようって

『わくくん...お誕生日、おめでとう

...だいすき』

「っ...ほんと、ずりぃわ、」

「これからも、俺のことだけ見ててな...？」

これからもって、今までも私が湧くんのことしか見てなかったみたいじゃん、相変わらずだなぁ

だけど、そんな彼が愛おしくて大好きで堪らないのは事実で

これからも、自惚れな湧くんでいてね

...なんてね。

『ウヌボレくん』 end