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元木side
彼女とアウトレットに行った時、前から歩いてきたアイツと目が合った
あの瞬間嫌な思い出が一気に蘇ってきて、余裕がなくなって
不思議な顔をする彼女の手を少し強めに引いた
帰ってからも、何となく胸がざわめいて落ち着かなかった
そしてその1週間後、再び目の前に現れたアイツは
湧の友達に聞いて来ちゃった、なんて当時は可愛いと思っていた笑顔を俺に向けてきたけど
今の俺には彼女しか見えてないから、迷惑以外の何ものでもなかった
"家入れてよ"
"は？なんで"
"久々じゃん、お喋りしよ？"
こいつは何がしたいのか、何が目的なのか、
そんなことはどうでも良くて、彼女を裏切りたくない、それだけだった
"別に喋ることなんてないから。さっさと帰れよ"
自分のこの感じが久しぶりすぎて、あの頃の自分が戻ってしまうんじゃないかって少し怖くなって、無理矢理閉めようとした扉の先で
アイツが放った言葉に俺は何も言えなかった
"...いいの？あの彼女ちゃんに湧の過去教えても"
"は？"
"私の人脈舐めないでよね"
そう言って見せてきたのは、リンちゃんのSNSのアカウント
本人じゃないというところが、こいつの性格の悪さを物語っている
"...さっさと入れよ"
俺のその言葉にお邪魔しま〜す、なんて楽しげに俺の横を通り過ぎて部屋へ入っていくアイツ
俺は玄関に立ち尽くしたままスマホを開いた
〔ごめん、風邪引いたから今日休むわ〕
〔行き帰り気を付けてな〕
結局俺は、彼女に嘘をついた
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作者名：きい
| 作成日時：2020年12月19日 15時
