『距離感』Ⅱ (ページ39)

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元太side

「俺、意地悪しちゃった」

俺は今、上手く笑えてるだろうか

"いじわる" なんて可愛い言葉似合わないくらい酷い顔をしてるんだろうな

Aの顔を見ればそれは明らかだった

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「今日、海斗が北海道に行く日だって、知ってた。」

『えっ...』

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あー、やっぱり俺が知らないって思ってたんだね

そんなの、知ってるに決まってるじゃん

俺が海斗と会わなくても母親同士話してるんだから

Aん家だってそうじゃない？

あ、海人がいるか。

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「知ってて、わざとデート今日誘ったんだ。」

『...そっか。』

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なんで？

そう聞いてくると思ったのに、Aは何も聞いてこなくて

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『体調悪くないならさ、早く準備してきなよ。まだ電車間に合うよ？』

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そう無理して笑うA

俺の方が泣きそうになった

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「...行かない。」

『っ...なんで？私とは行きたくなくなった？』

「それは違う！」

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俺は今も昔もずっとAが好きだ。大好きだ。

だけど

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「Aは、俺の事好き...？」

『急にどうしたの？当たり前じゃん...元太のこと好きだよ？』

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ありがとう。

もうそれで十分だよ

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俺は掴んだままだった彼女の腕をグッと引くと、しっかりと抱き締めた

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『元太...？ねぇ、どうしたの？』

「海斗のとこ、行ってきな」

『え...』

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そっと体を離すと、彼女はやはりとても動揺していた

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「最近、ずっと海斗のこと考えてたでしょ。」

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よくボーッとしてたもんね、さすがに気付いてたよ

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『なん、で...私、元太のこと好きだよ？元太と、旅行行きたいよ』

「俺は、もう十分幸せだから。自分の気持ちに嘘つかなくていいんだよ？」

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あの日、海斗の見送りより俺との旅行を選んでくれた時

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本当に嬉しかった

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ずっと不安だったから。

海斗に俺は勝ててるのかなって。

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だけど、その後もAは俺といても時々ボーッとどこか遠くを見ていて

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その頭の中にいるのは海斗なんだろうな、って。

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『......元太...ごめん、私、、』

「ううん、俺の方こそごめんね。」

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俺のそばにいてくれてありがとう。