『距離感』Ⅱ (ページ37)

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「お前、ホントにそれでいいの？」

『...何が』

「分かってんだろ？」

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いつになく冷たい兄の言葉

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今日は3月19日

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明日は元太と遠出をする日、私は荷造りをしていた

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「空けとけって言ったじゃん。」

『うん、それはごめん。でも元太明日しか空いてないって言うし。』

「だからって...」

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兄はまだ何か言いたげに私の部屋に居座っている

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『...私は海斗に振られたの。海斗だって別にただの幼馴染が見送りに来なくたってなんとも思わないでしょ。』

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自分で言っておいて、目の奥がツンとする感覚

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「は、お前本気で言ってんの？」

『...当たり前じゃん。お兄しつこいよ』

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頼むから早く出てって。
じゃないと涙がこぼれそうなんだ。

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「...後悔しても知らないからな。」

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兄はそう吐き捨てるとやっと私の部屋を出ていった

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泣きそうなのを悟られないように黙々と動かしていた準備の手を止めると

私はベッドへ寝転んだ

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後悔なんて、しない。

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だって、元太と初めての遠出、お泊まりデート

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好きな人と一泊で出かけるんだから、それに行かない方が後悔する

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『あっ...』

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その時ふと目に飛び込んできたのは

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あの日海斗からもらった20歳のプレゼント

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久しぶりにそれに触れると、

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色んな思いが巡って、気付いたら私の頬には涙が伝っていた

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『...海斗......おめでとう。』

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私は直接言うことの叶わなかったその言葉を小さく呟くと

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今までの気持ちと共に
それをそっと、引き出しへしまった