転機雨 (ページ6)

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バイト先は家の近くを選んだ

歩いて10分、走れば5分

普段運動なんかしないから、この5分が苦しくて
思わず胸の辺りをギュッと掴む

最上階にいるエレベーターも待っていられなくて、3階まで駆け上がる階段も

上手く足が上がらない

『、ただいっ...ん、！』

自分が上手く歩けてるかも分からない、そんな状態で開けた玄関の扉

閉まりきる前に思いっきり引かれた腕と押さえつけられた白い壁

久しぶりの運動に、体は酸素を求めるのに
塞がれた唇はそれすら許されない

苦しい、苦しいけど

『げ、んた...っ』

「...なんで、」

『ごめん......ごめんね、？』

彼が苦しむ表情を見る方がよっぽど辛い

真っ暗な玄関先、必死に呼吸を整え
乱れた襟元はそのままに、私は彼を抱きしめることしか出来ない

「Aは...俺がいないとダメでしょ、？」

『...そうだよ。元太が私の全てだから』

彼が、なんで私なんかとずっと一緒にいてくれるのか分からない

彼が、なんで私なんかのために涙を流すのか分からない

でも、私が彼を大切に思うように

彼も、今だけは私を必要としてくれてる、愛してくれてるって

『っ、だいすき...』

「ん...オレも、」

夜に沈む私たちは、ただ互いを求め合う＿＿＿