転機雨 (ページ49)

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『あーもう最悪...って、あれ、？』

その日、天気予報は大ハズレで久しぶりにびしょ濡れで帰ってきたそこで、ちゃんと閉めて出たはずの玄関の鍵が開いていた

いつも私の方が後に出て、先に家に帰るはずなのに、おかしいな、と恐る恐る扉を開いた

「おかえり、A！」

『た、だいま、え、今日早いって言ってたっけ...？』

「うーん、まぁとりあえず入ってよ」

ちょっと言葉を濁して私の腕を引く彼に続いて廊下を歩く

「じゃじゃん！」

『え！めちゃくちゃご馳走じゃん！どうしたのこれ？』

テーブルに並ぶそれはいつもより華やかで、あれ、今日私誕生日だったっけ？なんて
でも1か月前に盛大にお祝いしてもらっているからそれも違うわけで、首を傾げて見せればも〜、なんてちょっと口を尖らせる彼

「やっぱ忘れてたでしょ、5年記念日」

『...あ、』

「酷いなー、せっかく頑張ったのに」

拗ねた素振りを見せる彼は、やっぱり年下らしく可愛らしくて愛おしくて、ごめんね？って顔を覗き込めば
唇に広がる温もりと、隙あり、とイタズラに笑う彼

『...もう、(笑)』

彼は毎日のようにこうしてわかりやすく愛を伝えてくれるから、最初の頃はそれが恥ずかしくて、顔真っ赤だよ、なんて笑われたもんだけど
最近はさすがに慣れてしまって日常の一部になっていた

「うお、」

『...好き。今までありがとう、光輝』

でも今日は特別な日だから、ちゃんと私も分かりやすく愛を伝えようって
ニヤニヤ顔の彼に抱き着いた