転機雨 (ページ38)

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「......先輩、」

『なに、？』

「何で俺の連絡先、知ってたんですか、？」

全てを終え2人並んで布団を被ったベッドの上、繋がれた手からの温もりが心地良い

『...何ヶ月か前、スーパーで買い物してたらね、黒田くんと同じ制服を着た同じくらいの背丈の男の子がくれたの、』

『もう一度、会ってやってくれって...』

「え、」

誰だろう、そう思ったのは一瞬だけで
光成だって、すぐ分かった

『なんで、私のこと知ってたんだろ...』

「...何回か、バイト先来たことあるんです」

『そうだったの、？』

「はい、それに...そいつ、先輩ん家の近所だから、あのスーパーに来るってわかったんだと思います」

光成が、ここまでしてくれていたなんて知らなかった

ただ、何も言わずいつも通り接してくれていただけでもありがたかったのに...

今度、会ったら何か奢らないとな

『...その子がね、言ったの。ずっと真っ黒だって、オレの知ってるアイツはあんなんじゃないって、』

「......」

『私、何も言えなくて......だって、私のせいだから...』

「ちが、」

『違わないよ...』

ずっと、天井を見てた先輩がゆっくりと身体を傾けこちらを向いた

『ごめんね...』

「せん、ぱい...」

『私が、中途半端に逃げたから...』

ずっと後悔してた、何度も連絡しようと思ったけど今更私に何ができるんだろうって、また中途半端に傷付けてしまうじゃないかって、だから連絡できなかった

そう言って、重力に逆らえない涙が先輩の瞳から零れ落ちた

こんなとき、抱きしめることしか出来ない自分が情けない

小さく鼻をすする音だけが響く

会えなかった間にも先輩を苦しめていたなんて、中途半端なのはむしろ俺の方だ

『......そいえば、』

「うん、？」

『さっき近所って言ったけど...なんで私の家知ってたの...？』

「あ、...」

ずっと隠してたこと、とうとう先輩に明かす時が来てしまったのだと悟った