転機雨 (ページ31)

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You

あの日と同じ、曇天だった

今にも泣き出しそうな空の下、急いでスーパーへと足を踏み入れた

『何にしよう...』

毎日ご飯を作っていれば献立に迷うことなんてしょっちゅうで、半額シールの貼られた精肉売り場の前を行ったり来たり

久しぶりに揚げ物にしようかな、と鶏モモ肉を手にした
時だった

「あの、」

知らない声がした

「Aさん、ですよね」

『え、？』

名前を呼ばれるまで、自分にかけられた声だとは気付かなかった

『......だれ、ですか、？』

知らない顔だった

だけど、見たことがある制服だった

「...気付きました？」

『......』

少し困ったように眉を下げ、急にすいません、と礼儀良く頭を下げた目の前の高校生にドクンと大きく心臓が動く

いったい、私に何の用なのだろう

なぜ、私の顔を知っていたのだろう

何も言わない......いや、言えない私に
その高校生は、強く拳を握りしめた

「......アイツ、あの日からずっと、真っ黒なんです」

「おれの知ってるアイツは、あんなんじゃないんです...」

「もう一度......光輝に会ってやってくれませんか、？」

あぁ、私のせいだ

暗闇から救いたかったはずなのに、もっと、奥深くまで突き落としてしまったんだ

そう思った

「これ...光輝の連絡先です」

突然すいませんでした、そう言ってその高校生はノートの切れ端を私の手に握らせるとまた律儀に頭を下げて帰って行った

連絡してあげてほしい、あの純粋で透明な瞳が私にそう訴えかけていた

「うわー、降ってきたね」
「間に合わなかったか〜」

知らない主婦さんたちの会話の奥に、大粒の雨が降る音が聞こえた