転機雨 (ページ29)

今日:20 hit、昨日:21 hit、合計:45,756 hit

29 ページ29

*

「ただいま」

『おかえりなさい』

あの日から数ヶ月、私は "いつも通り" の生活を送った

いつも通り、彼と大学へ行き

いつも通り、帰宅して

いつも通り、すぐ出掛けてしまう彼のただいまを待った

2年半続けた週2回のあの時間は幻だったのか、
そう思うくらいずっと家に居た

大学に居るときはずっと、彼が隣にいるから
彼さえ居ればいい私に友達なんていないし

バイト先で特別仲良くなった子も......

＿＿＿雨が降る度、あの子を思い出す

それと同じように、雨が降る度
彼はいつも以上に私を求めるんだ

嬉しいのに、幸せなのに

どこかポカリと穴が空いたようだった

「っ、...A、今何考えてる、？」

『...ん、...げんたの、こと、考えてたよ』

うそつき、ってちょっと乱暴に私の口を塞ぐ彼に私は
本当だよって、それに応えることしか出来ない

こういう日は、時より彼からする甘ったるい人工的な匂いがしないから

私の汚い感情が消えて、素直に身体を委ねられる

それなのに、空いた心の穴は埋まらないから

ちぐはぐな自分のそれが気持ち悪くて仕方なかった