転機雨 (ページ28)

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「明日から？！」

『はい、本当に自分勝手でごめんなさい...』

「......せめて明日は来れないのか」

『っ、......すいません』

2年半、本当にお世話になりました

ちょっと口が悪いときもあるけど、いつも優しくて、もちろん仕事も完璧で

それでいてちゃんと怒ってくれる店長を尊敬していた

本当にいい職場だったと心から思う

ずっと使っていたロッカーから置きっぱなしの靴や小物をカバンに突っ込む

でも、今思えば土曜日に、しかも昼間にここへ来るのは初めてかもしれない

2年半ずっと、金曜日と日曜日しか来てなかったから

「...まぁ、いつでも戻ってこいよ」

『......はい、ありがとうございます』

もう一度、深く店長に頭を下げた

顔を上げた先、バックヤードからホールへ繋がる扉の奥

『っ......』

＿＿＿目が合った

近づいてくるその姿に、何故か動けなかった

「先輩、なんでここに...」

『い、や...』

「A今日でここ辞めるらしい」

店長の一言に、真っ黒な瞳が大きく開かれ
すぐに靄がかかった

「........それって俺のせいですか？」

『違う、！......違うから、安心して、？』

きっと、あなたを暗闇から救ってくれる人が必ず現れる

胸に抱えたモヤモヤを晴らしてくれる人がいつか必ず

『......じゃあね、』

先輩！という声に振り返ることは出来なかった

......やっぱり私は弱い人間だ

できれば、あなたのその瞳の色を変えてあげたかった
真っ黒な雲から零れ落ちる雨を遮ってあげたかった、

...いや、一緒にその雨を被りたかった

昨日、傘を持たないあなたに拒否することなく腕を引かれたのは、心のどこかでそう思ってたからなんだ

中途半端でごめん

だからせめて貴方は、強い人になって＿＿＿＿＿＿