転機雨 (ページ20)

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Genta

『......まつだくんは、何を抱えてるの、』

「え...？」

あの日、彼女は震える声でそう言った

オレが彼女に感じてたのと、同じだった

こんなに雨に濡れるのは初めてで、春の終わり
まだ少し肌寒いそこで、彼女はオレの傘の下でポツリポツリの話し始めた

『......私は、親が居ない、』

『母は、突然倒れた...』

『父は......人を...っ、』

雨なのか涙なのかわからないそれが、彼女の頬を伝った

それは、意味わかんないくらい綺麗で儚くて

このまま雨と一緒にどこかに行ってしまいそうで

「オレが...！」

「オレが、お前のそばにいる、ずっと、！」

小さなオレの傘が転がった

雨は勢いを増して2人に降り注いで

抱きしめた体はどこか冷たい

『...っ、ずっと、？』

「そうずっと......だから、泣かないで...」

その後の記憶は曖昧だった

気付いた頃には彼女の部屋にいて

濡れた身体を拭くことも忘れ、ただ互いに求め合った

何度も重なる唇は、高１のオレらにとっては大人の真似事みたいなものだったかもしれないけど

それでも必死だった

「...オレの父さんさ、本当の父親じゃないんだ」

『......そう、』

「表面上上手くやってるつもりだけどさ、やっぱりいつも本当の父さんのこと思い出しちゃって...」

ガタゴトと、乾燥機の回る音が響くそこで
オレたちは肩を寄せ合い自分の過去をさらけだした

自分の裏を誰かに話すってきっと勇気がいることで

オレ自身、誰にも話したことがなかったのに
オレに全てをさらけ出してくれた彼女になら大丈夫って、そう思った

「ねぇ、オレたち付き合おう」

『......』

「きっとオレたち、似たもの同士だから」

16歳のオレの精一杯の言葉

似たもの同士なんて、今思えばアホらしい
だって間違いなく背負ってるものが違う

歩んできた過去が違う

それでも彼女はオレの手を握り小さく頷いた

『......ずっと、元太のそばに居る＿＿＿＿＿＿』