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「...湧は、Aのこと好きでしょ？」
「は...？」
「一人の女の子として、好きでしょ？それにさ、」
「......Aの気持ちも、気付いてるでしょ、」
オレの言葉に顔を歪ませる湧はやっぱり苦しそうで
ほら、2人とも同じじゃんって。
だったらさ、彼女を救えるのは
今、彼女がそばにいて欲しいのは
湧しかいないよ
「オレはもう、いいと思うよ」
「平塚...」
2人とも、もう十分我慢したでしょ
8年間もずっと一緒にやってきて、
そりゃもちろん、苦しい思いもしたと思うけど
Aは一途に湧のこと想ってたし
湧もずっと、Aの隣にいて守ってきた
「Aが苦しんでるのも、湧が自分責めるとこも
もう見たくない」
これからはもっと近くで、Aのこと守ってあげればいいじゃん
そう笑って見せれば
ありがと、と湧は立ち上がって
行ってくるって
「湧待って！」
「ん？」
「部屋番号、知らないでしょ」
エントランスからは、部屋に入るとこ見えないもん
「湧の誕生日だよ」
「え？」
引っ越すとき、１階は危ないから他の階にしたら？って言ったのにさ
頑なに、ここがいいって聞かなかったんだよね
「A、可愛いよね」
「...ほんと、バカで愛しいわ」
駆けてく湧の背中をぼーっと見つめながら思う
ねぇA
やっぱオレは、幸せになっていいと思うよ
...てか、幸せになってくれないと、オレが報われないわ、なんて
1人で戻ったリハ室で、寄り添うように隣に座ってきた黒ちゃんの肩に、ちょっぴり泣きそうになった
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作者名：きい
| 作成日時：2021年5月1日 22時
