19：部屋番号 ページ12
*
元木side
「あれ、今日Aは？」
「風邪引いたらしい」
「えー、珍しいね、嵐でもくる？」
朝イチで入っていた体調不良を知らせるメッセージに
昨日やっぱ体調悪かったんじゃんって
昨日、心ここに在らずというか、ボーッとしていたアイツはあからさまにいつもと違ったのに
ちゃんと俺が止めてやるべきだったってちょっと後悔
てか、アイツが風邪引くなんていつぶり？多分中学以来だよな
「一人暮らしで風邪引くとかしんどそう」
「湧、お見舞い行ってあげれば？」
「あー...でも俺アイツの部屋入った事ねーし」
あじの言葉にチラリと平塚の方を見れば困ったように眉を下げてて、それはなんの顔だよって
相変わらず読み取れない心の中と、何もしてやれない自分に何だか腹が立つ
そりゃ家まで行ってやりたいけど、家の中まで着いてくのはいつも平塚の役目っていうか
まぁ、ビビって部屋行っていい？って聞けない俺がいけないんだけど
結局アイツの居ない今日のリハは全然集中できなくて
振り付け師に怒られまくった俺
モヤモヤしたまま頭を冷やそうとリハ室を出ようとしたとき
「Aちゃん、大丈夫かな...」
「あの日のこともあるし心配だよね」
扉の近く、2人っきりで話された会話が俺の耳に入ってきて
「ね、何の話？」
「あ、湧くん...」
「なんでもないよ、ねぇ将聖？」
そんな訳ないじゃん。この2人とAが3人で仕事以外で遊んでるの聞いた事ないし
ちょっと挙動不審な将聖と、口調はいつも通りだけど若干泳いでる拓実の目
ここ数日、ちょっとだけ、
アイツが俺から離れようとしてることさすがに気付いてるし
でも原因は分かんねぇし、もしこの2人が知ってるなら...
「A、最近何かあった？」
俯いたまま何も言わない将聖と、何もないけど、と俺の目を見ず言った拓実に
「頼むよ...教えてくれよ...っ！」
声を上げたのは俺で
あれ、何で俺こんな余裕無いの
年下の後輩相手に何してんだろって
心底自分のことが情けなく思えた
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作者名：きい
| 作成日時：2021年5月1日 22時
