Narzisse IV

今日:17 hit、昨日:18 hit、合計:51,009 hit

．ページ46

子供達を食堂に追いやった中村は立ち上がると自身の部屋がある二階へと向かうため階段を登った。
二階へ登った先、自身の部屋の隣の部屋の扉にもたれている中村のことを待っていたのであろう白髪の青年の姿があった。

｢海人お兄様、おかえりなさい。｣

｢真都か、ただいま。｣

｢仕事、今日はどうでしたか? ｣

｢いつも通り、かな。｣

中村の言葉にラウールは不服そうな表情を見せた。
喰種によって家族を失ったラウールにとって喰種は憎むべき、殺されるべき存在でしか無かった。

｢早く俺も海人お兄様みたいに捜査官になっていっぱい喰種処分するんだァ、｣

｢ …………そっか、｣

ラウールの前を通り抜け自身の部屋へと入り込んだ中村は鍵をかけるとその場に座り込んだ。力無く座り込み足を投げ出した中村はジャケットを脱ぐとクローゼットの前へと放り投げた。ネクタイを緩めながら鞄の中へ手を入れた中村は二つのクリアファイルを取り出した。

｢はぁ、こっちは誰にも相談できないよな。｣

重い体を引きずるように立ち上がり質素な机にそれを投げ置いた中村は適当な服に着替えると部屋を出て鍵を掛けた。

二つのクリアファイルの中には吉澤が途中まで書き上げた戦闘記録の報告書と、フレーム拡張施術と川島の名が指定された同意書が入っていた。