Narzisse IV

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Groll ページ45

既に薄暗くなった街灯など無い森の山道、アタッシュケース片手に歩いていた中村の表情にはいつもの笑顔などなかった。高く生い茂った草花が中村の履いている革靴に引っかかる。

｢草刈れよなまじで、そんなに教会の存在バレたくないかな。クソ上層部が。｣

折れた木の破片を踏みつけた音が夕闇の中に響いた。
絡みつく緑に舌打ちをした中村は赫子をバネに宙へと浮かび草の生い茂る地面を飛び越えた。

｢まじだる、｣

灯りの漏れる教会の敷地前へと降り立った中村は門に手をかけると軽々と乗り越えた。感情など出していなかった顔を両手で少し強く叩いた中村は自身の頬を指先で押し上げ、無理矢理笑顔を作る。

重たい扉を両手で引いた中村を小さな少女や少年が迎え入れた。スーツを着た中村の足元に群がった子供達は目線が合うようしゃがみ込んだ中村に向かって口々に話し出した。

｢かいとおにいさま、おかえりなさい。｣

｢おにいさまおしごとのおはなしきかせて! ｣

｢おべんきょうみてほしい、おにいさま｣

｢おにいさま、｣

｢ねぇ、おにいさま｣

｢あー、わかったから順番な。着替えてくるから待ってて? ｣