Narzisse IV

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吉澤は乱雑に散らかされた服や荷物を見遣ると当然の如く拾い上げ畳み始めた。ロッカーの扉に挟まったままにされていたネクタイも折り畳み網棚の部分へと仕舞い込む。ソファで崩れている血塗れのシャツのままの川島とロッカーの中を見比べた吉澤は川島の隣の自身のロッカーを開くと、しっかりとアイロン掛けされた白シャツを取り出した。

｢シャツ新しいの無かったの? 俺のちょっとでかいけど、これ着なよ。｣

｢ありがと、しーくん。起こして。｣

両手を伸ばした川島の腕を掴み引き上げるとシャツを手渡した。ソファに埋もれていたせいで乱れた髪を手櫛で直した吉澤は軽く息をついた。

｢そんな姿、如恵留尊敬してる下等捜査官達が見たら泣いちゃうよ。｣

｢別に俺も人間だし、そんな完璧に生きれない。｣

汚れたシャツを脱いだ川島は吉澤から新しいものを受け取ると腕を通した。一つ一つ順番に止められていく筈のボタンは明らかに掛け違えていた。

｢如恵留、ボタン掛け違えてるよ。｣

｢…ほんとだ。｣

肩幅が合わず少し手の甲に袖がかかってしまうシャツを着た川島の姿に吉澤は少し呆れたように掛け違えたボタンを外していく。今度こそ掛け違わないように止められていくボタンに川島は目を伏せ口を開いた。

｢なんでこんなに上手くいかない日があるんだろうね。｣

｢別に如恵留が完璧じゃなくても誰も責めないよ。俺達一応同期じゃん? 頼ってよ、ね。頼りないけどさ。｣

先程自身のロッカーからシャツと共に取り出した青藤色のネクタイを川島の首かけるとそのまま慣れた手つきで結んでいく。何も言わずされるがままどこかを見つめる川島の姿に吉澤は何かを憂いた。