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｢ お前は? 強いの? ｣
ピンク髪の青年の問いに中村は少し自信の無さそうな表情を見せた。
｢ んー、俺はまぁ死なない程度に頑張るよ。｣
中村は《萌黄》に力を込め握り直した。
《萌黄》は日本刀を模したクインケである。
細く軽い刀身は中村の素早い剣筋との相性も抜群でアカデミー生時代からずっと壊されることなく共にあるクインケであった。何度も、何度も握ってきたそれを中村は手足のように自由自在に扱う事ができた。
何度か感触を確かめるように萌黄を指先で弄んだ中村は周りに群がった喰種を一掃した。
傷ついた喰種が崩れ落ちていく様に中村は青年を見遣ると少し憂いたような表情を見せた。
｢ お仲間さん、ボロボロだけど。まだやる? 〈珊瑚〉｣
｢ 珊瑚…? なんだそれ。｣
顔を顰めたピンク髪の青年、珊瑚に中村は得意気に笑った。
｢ いや、名前知らないから。髪色、ピンクの珊瑚礁みたいだなって。この間何かで見たんだよね、綺麗だったから忘れられなくてさ。｣
中村の言葉に少し驚いたような言葉を見せた珊瑚は足元に転がっていた喰種を引き摺りあげると中村に向けて笑みを零した。
｢ お前おもしろいな。名前は? ｣
｢ 中村海人 ｣
名乗った中村に珊瑚は背を向けた。
｢ 覚えとくよ、海人。｣
｢ 別に覚えなくていい。｣
息のある喰種に声をかけ立ち去った珊瑚を追おうとした川島と吉澤を中村は静止した。
｢ 見逃すの、喰種なのに。｣
不思議に思ったのであろう問いかけた川島に中村は俯き気味に答えた。
｢ 逃げていったのをわざわざ追う必要は無いでしょ。｣
｢ ………。｣
｢ 閑也、その人のことお願い。｣
そう言った中村は息絶えた喰種の傍らに座り込むと手を合わせた。長い間祈るように目を瞑る中村の姿を、珊瑚が遠くから覗いていたことは誰も知る由がなかった。
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作者名：夏向 | 作成日時：2020年7月19日 11時
