Narzisse IV

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Rucken ページ31

携帯端末をジャケットに仕舞いこんだ川島はため息をつくと、アタッシュケースを片手に歩き出した。吉澤と中村からの遅刻連絡に肩を落とした川島は先に辺りの見回りを始めようと操作資料片手に町外れへと進んでいく。合流場所から移動することを一報入れようともう一度携帯端末を取り出そうとした川島の視界に飛び込んできたのは街灯の灯りが切れた道の奥へ入っていく明らかに喰種であろう顔を白い布で覆い隠した青年達だった。手早く吉澤へメッセージを送った川島は身を隠すように青年達の後をついていく。

青年達が進んで行った方向から大きな悲鳴が聞こえてきた。その声に反応した川島はアタッシュケースを展開させると同時に駆け出した。青年達が赫子を揺らしている中央に囚われている女を見遣った川島はクインケ片手に飛び出すと、喰種達へと刃を向けた。

｢うわ、お前ら何余計な奴連れてきてんだよ。｣

怯えている女に赫子を向けている首領であろうピンク色の髪色の青年に川島は刃を向け直した。

｢一人の女性相手に男が寄って集って格好悪いなぁ、｣

｢あー、うるさい、まじうるさい。恵まれてる人間なんかに俺らのことなんて分かってたまるか。｣

川島に向かって青年は肩辺りから赫子を放出させた。
自身に向かって飛んできたそれを弾き飛ばした川島は軽い身のこなしで数歩後ろに下がると、下っ端なのであろう喰種達を牽制した。

｢戦闘開始、ですかね? ｣

川島はクインケを構え直した。
飛んでくる赫子や伸びてくる赫子を捌く金属音と、敵の喰種から溢れ出す血飛沫が道に広がった。
喰種へ刺された刃を川島は引き抜くと、ジャケットの袖でそれを拭った。

｢あ、またやっちゃった、クリーニング出したらまた怒られちゃうじゃないですか。｣

汚れた袖を見た川島は自身に呆れたようにため息をつくと襲いかかる敵をひらりと避けた。