Narzisse IV

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しずくがぽつりぽつりと落ちる音が静かな病室に響く。
傷口の止血と縫合を終え、安静を強いられた宮近の腕には複数の管が繋げられていた。

｢動きづらい…捜査の資料…書類全部局じゃん最悪。絶対如恵留さんにも失望されたし。あーー、もうやだ。本当にやだ。｣

ぼそぼそと布団を頭から被り一人言を呟く宮近の姿を、ドアを静かにあけ部屋の入口に立っていた吉澤は吹き出して笑った。

｢宮近、本人のいないところでは如恵留のこと名前で呼んでるのな。それ本人の前でしてあげれば喜ぶのに。｣

｢なんでいるんですか吉澤準特等。確かにさっき俺を助けてくれたのは貴方ですけど一人言はさすがにちょっと恥ずかしいので聞かないでください。あと本人の前で名前呼びは死んでも無理です。恥ずかしすぎる。無理。｣

息継ぎも程々に話す宮近に吉澤は笑いを堪えた。

｢宮近本当に変わったよな、前までは如恵留以外全員敵!って感じだったのに。急にどうしたの。｣

部屋に備え付けられている丸椅子に腰掛けた吉澤に宮近は布団を被ったままの状態で答えを出した。

｢ ……一人が怖くなったんです。如恵留さんいなくなった時に俺どうしたらいいかわかんなくなるなって。俺は如恵留さんの居ない世界なんて必要ないから。一人でいることに慣れたくないなって。でも、結局如恵留さんがいなくなったら俺多分耐えられないです。｣

小さな声で呟く宮近の震える背中に吉澤は手を添えた。
一定のリズムで揺らされるそれはいつの日にか泣いていた宮近自身を抱きしめた捜査官と重なって見えた。