Narzisse IV

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Laika. ページ23

｢翔太、お待たせ。｣

｢いや、全然待ってない。早く行こ。｣

渡辺と合流した宮舘は、駅の方へと駆け出した。
走っている間にも、渡辺が事前に目を通したのであろう処分対象の詳細を宮舘に話していく。

｢複数体の喰種が駅前で暴れてる。推定レートはA、通行人が数十人怪我を負ってるが死者は今のところ無し。下等捜査官達が声をかけたところ突然暴れだしたらしい。首には白い枷、研究施設から逃げ出した飼い犬と推測。｣

｢了解、把握した。｣

横並びで走っていた二人は駅を目の前に二手に別れた。
渡辺は赫子を使い駅前の交差点が良く見えるビルの屋上へと登っていく。宮舘はアタッシュケースを展開させると駅前を飛び交う喰種達目掛けて走る速度をあげた。

クインケを展開した宮舘は長い間共にあるそれに、自身に言い聞かせるかのように声を掛けた。

｢被害は最小限に、無駄な動きはしない、通行人に死者を出さないことと下等捜査官の救出を最優先。頼むよ、〈ライカ〉｣

〈ライカ〉は大剣を模したクインケである。
片刃の鋭い大きな剣は両手で振るうのがやっとの程のものであったが、パワー型で重心低くクインケを扱う宮舘との相性は良く、長年共にあるが故か手によく馴染んでいた。

大きな一太刀で周りにいた喰種を傷つける攻撃に喰種達は身を引いた。宮舘に襲い掛かること辞め一度身を引こうと後退りした喰種達を、どこからともなく飛んできた円盤のようなものが食い止めた。ビルの屋上、渡辺が放った桜の攻撃が爆発を起こし喰種達を散り散りにさせる。