Reif ページ17
夕陽の差し込む深澤邸。
縁側に腰掛けた岩本にもたれ掛かるように眠る深澤とその深澤を愛しそうな目で見つめる岩本の姿があった。
頭上から瓦屋根を蹴る軽快な音が聞こえたかと思うと、二人の目の前に夕陽に照らされた金髪が舞い降りた。
｢ 二人とも元気〜? ｣
土埃を立て深澤邸に降り立ったのは中村だった。
緩やかな風によって翻されたロングコートは中村が捜査官だった時に誕生日プレゼントとして同期から渡されたものであった。
｢ 海人どうしたの。ふっか寝てるから静かにね。｣
｢ どうしたのじゃないでしょ、肉!!届けに来たの!! ｣
中村は岩本に茶色の包みが沢山入った袋を手渡した。
｢ ありがと、腹減ってたんだよね、助かる。｣
袋から一つ取り出し包みを剥いだ岩本はそれを口に含んだ。岩本の赤く染った両目と、岩本達を見つめている中村の視線が交わる。
｢ ん?どうしたの海人。あ、食べる? ｣
中村の方へと一つ差し出された包みを中村は受け取らなかった。
｢ んーん、いらない。コーヒー貰っていい? ｣
｢ いいよ。勝手に飲んで。｣
見知ったように縁側から室内に上がり込んだ中村は冷蔵庫の中からガラスのボトルを取り出すと、氷と共にグラスに注いだ。氷同士が擦れる軽やかな音が室内に響く。
｢ 照くんもいる〜? 肉食べてるからいらないか。｣
｢ ん、いらない。｣
ぱたりと冷蔵庫を閉じた音と共に中村は深澤の隣に座り込んだ。氷によってできた水滴が中村の手を濡らしていく。
コーヒーを口に含んだ中村は自身の隣で岩本にもたれて眠る深澤の頬に指を突き刺した。
｢ 深澤くんのほっぺたもちもち。｣
｢ 起きっから触んな。｣
中村の手を深澤から遠ざけた岩本は自身の口の端についた赤い液体を拭った。
ぐらりと揺れた深澤の体を自然に抱き寄せた岩本の姿を見た中村は少し羨ましそうな表情で笑った。
｢ いいなぁ二人とも、仲良しで。｣
｢ 海人もしめとか、阿部と佐久間も仲良いだろ。｣
岩本の言葉に膝を抱え込みグラスを見つめ俯いた中村は小さな声で呟いた。
｢ 俺も愛されたかったなぁ。いや、俺が気づかなかっただけなんだけどさ、うん。気づいた時にはこっちにいたからなぁ…。｣
自身のコートの裾を摘んだ中村は岩本と深澤の方を見つめ目を細めた。自身が出来なかったことを、自身に言い聞かせるように、二人がちゃんとできるように噛み締めた言葉は何処か届いて欲しい場所には届かない。
｢ 愛にはちゃんと、答えてあげなきゃダメだよ、照くん。｣
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作者名：夏向 | 作成日時：2020年7月19日 11時
