Mitleid ページ15
｢ 如恵留くんにフレーム拡張の施術受けさせるってどういうこと? ｣
白衣の男の胸ぐらを掴んだ中村はそのまま壁へと押し付けた。押し付けた手とは反対の手に持たれた剣の切っ先は周囲に群がる男達へと向けられていた。首元を絞められ息苦しそうに悶える男に中村は鋭い目を向ける。
｢ どういうことだって聞いてんだよ。ここ全部真っ赤にしてもいいの?嫌だろ?じゃあ答えろよ。｣
剣を構え直した金属音が真っ白な空間に響く。
中村が壁へと押し付けた手を離すと力の抜けた男は地へ落ちた。周囲に向けていた剣を転がった男に向け直した中村は首元に刃を添えた。
｢ なんで如恵留くんなの。半喰種なら誰でもいいってか?? ｣
首元から薄らに流れ出した血液が真っ白な床にぽたりと落ちる。ぽつりぽつりと溜まる血液は男の白衣も赤く染めた。
｢ 誰でもいいって言うなら、俺でもいいよね?? ｣
大きく息をついた中村は押し当てる刃に力を込めた。
中村の瞳から無意識に流される雫に本人は気づいていなかった。
｢ 如恵留くんをこんな糞みたいな実験の被験者にはいどうぞって差し出せる訳なくない? 俺なら、俺は誰にも必要とされてないから、されないから、好きに使っていいよ。うん。｣
押し付けていた刃を下ろし力を抜いた中村を周囲の男達が押さえつけた。先程まで中村に刃を向けられていた男が白い何か円形のものを手に中村へ近寄った。
｢ 今日からお前は俺達の犬だから。｣
中村の首へとはめられた白い枷は飼い犬の象徴となった。複数の男に引きずられるように運ばれた中村は白で覆われた部屋へと入れられた。男達に乱暴をされた中村の整った顔は傷だらけになり、強制的に着せられた白い装束のような服も赤く染められた。大きな音をたてて閉められた扉を見遣った中村は傷口から流れる血を拭うと小さな声を零した。
｢ 苦しむのなんて俺だけでいいんだよ。｣
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作者名：夏向 | 作成日時：2020年7月19日 11時
