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川島は吉澤の手からするりと左手を抜き取りまた視線を外した。
｢ 早く結んでよ。｣
｢ はいはい、｣
相も変わらず優しく巻き付けていく吉澤が最後の部分をきゅっと結ぶと、逃げるかのように川島は椅子から立ち上がった。吉澤から離れベッドの上に座り込んだ川島の隣に座った吉澤は先程スーパーの袋から出しておいたものを川島に渡した。
｢ はい、どうせ何も食べてないんでしょ。｣
川島におにぎりを差し出すと吉澤は口を開く。
｢ それ食べたら寝なよ。｣
おにぎりを少しずつ口に運びながら川島は首を横に振った。
｢ どうせ眠れないもん、今日も。｣
拗ねたように膝を抱え込みおにぎりを口に運ぶ川島に吉澤は顔を覗き込むように訪ねる。
｢ 傍にいたら眠れる? ｣
突然言われたことに少し戸惑ったような表情を見せた川島は、今度はゆっくりと首を縦に振った。肯定の合図を受け取った吉澤は川島の羽織っているだけだった白いシャツに手を掛け前のボタンをしっかりと止めた。
｢ 風邪ひくよ。｣
｢ そしたらしーくんが看病してくれるでしょ。｣
｢ まぁ、するけどさぁ……。｣
おにぎりを食べ終え吉澤の隣に寝転がった川島はゆっくりと瞼を閉じる。微かに感じる吉澤の体温は川島を久方ぶりの夢の世界へと誘った。
｢ 風邪引いたら海人が怒るよ。｣
吉澤の苦言への返事は帰ってこなかった。
よほど疲れていたのであろう川島の静かな寝息が聞こえてくる。吉澤は川島の傷んだ金髪に手を伸ばすと、ゆっくりと手櫛を通した。いつかの昔彼にしてもらったように真似をする吉澤に、川島はどんな夢の中で幸せそうに笑ったのであろうか。
カウンターに置かれた氷の入ったビニール袋の氷はすっかり溶けきっていた。
｢ ゆっくり休みな、如恵留。｣
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作者名：夏向 | 作成日時：2020年5月25日 23時
