Mond ページ31
｢ 如恵留くんには月がとても似合うね 。｣
川島如恵留はずっとその言葉を忘れることが出来なかった。
"彼"がいなくなってから、いくら月日が流れても、右手に傷が増える度に川島は"緋色の彼"を思い出す。
〈中村海人〉は喰種捜査官であった。
川島と吉澤の数少ない同期であり、年齢は一つ下であったにも関わらず武術に長けていて優秀であった彼は弟かのように二人から可愛がられていた。
｢ 如恵留くん、ここどうやったら覚えられる? ｣
｢ あーー、、そこは………。｣
座学が得意な川島と武術が得意な中村、何でも幅広くこなす器用貧乏な吉澤。
完璧主義な川島が秀でた才能を持っていないと悩む吉澤と対立することは珍しくなかった。
｢ 如恵留には分からないよ。｣
｢ しーくんのそんなことなんか別にわかりたくないし。｣
小さなことで喧嘩をする川島と吉澤を止めるのは、いつも中村の役目であった。
｢｢ 海人はどう思う?? ｣｣
｢ えー、俺お腹減ったぁ。ご飯食べいこ。あ、もちろん二人の奢りね。｣
そう言って二人の手を強く引いた中村は目的地へと歩みを進める。
｢ 俺は二人とも好きだけどなぁ。それじゃダメなの? ｣
中村にそう問いかけられた川島と吉澤は顔を見合せ笑うのであった。
｢ ダメじゃないね。えー、俺たちなんで喧嘩してたんだっけ? 忘れちゃったねしーくん。｣
｢ だね〜。海人くんの今日の気分は何かな? ｣
中村の少し不機嫌な顔を覗き込み表情を伺う二人に中村は得意気に笑顔を見せるのであった。
｢ 角のレストランのオムライスで。｣
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作者名：夏向 | 作成日時：2020年5月25日 23時
